中小企業新事業進出補助金(2026年)
目次
I. はじめに:中小企業新事業進出補助金とは
A. 補助金の目的と位置づけ
正式名称は「中小企業新事業進出促進補助金」で、公募要領内では「新事業進出補助金」と呼ばれています。 目的は「既存事業と異なる事業」への前向きな挑戦のうち、「新市場・高付加価値事業」への進出を後押しし、企業規模の拡大や付加価値の向上を通じて生産性を上げ、賃上げにつなげることです。
この補助金の特徴は、「新規事業に必要な投資」を支援する設計で、補助対象経費に「機械装置・システム構築費」または「建物費」を必ず含める必要がある点です(消耗品中心・広告中心の企画は通りにくい構造です)。
公式資料の事例として、たとえば「医療機器メーカーが蒸留所を建設して、ウイスキー製造業へ進出する」といった、既存事業とは別の市場に向けた新事業の設備投資が挙げられています。
B. 2026年度に向けた制度の動向
2026年度は、中小企業新事業進出補助金が「ものづくり補助金」と統合・再編され、「新事業進出・ものづくり補助金(仮称)」や「革新的製品等開発・新事業進出支援補助金」といった新たな制度として生まれ変わる可能性が高いとされています。この統合は、持続的な賃上げと高付加価値化への支援を強化し、中小企業の成長を加速させることを目的としています。
II. 中小企業新事業進出補助金の概要
A. 補助金の管轄
公募要領(第3回)の発行主体は独立行政法人 中小企業基盤整備機構で、制度目的は中小企業庁の施策として整理されています(公募要領の記載上、経済産業省・中小企業庁・中小機構・事務局の役割分担が示されています)。
B. 補助対象者(誰が申請できるか)
企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等が対象となります。個人事業主も申請可能ですが、申請時点で従業員が0人の事業者は対象外となります。また「日本国内に本社および補助事業の実施場所を有する」事業者であることが前提です。
加えて、応募申請時点で「従業員数が0名の事業者」は対象外と明記されています。個人事業主でも申請はあり得ますが、少なくとも第3回公募要領のルールでは「従業員0」は不可です。
また、住所が同じ・実質的支配者が同じ等の場合に「同一事業者」とみなされ、その中の1社しか応募できない扱いが示されています(グループ内での重複応募の抑止)。
C. 対象となる「新事業」の考え方(超重要)
この補助金は、中小企業等が既存の事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を支援します。具体的には、企業規模の拡大や付加価値向上を通じた生産性向上を図り、最終的には従業員の賃上げにつなげていくことを目的としています。
この制度でいう「新事業進出」は、単に新メニューを増やす・既存商品の量を増やす、のような話では足りないことがあります。公募要領は「新事業進出指針」に基づき、少なくとも次の3点(製品・市場・売上)で要件を置いています。ここは後のIIIで、要件として整理します。
III. 申請の主な要件
この補助金は「3〜5年の事業計画」に取り組むことが前提で、その計画が複数の要件を満たしている必要があります。A. 3~5年の事業計画策定
計画期間は3〜5年で、その期間に「新事業の売上が伸びる見込み」「付加価値が増える見込み」「賃上げする計画」などを、数字で示す設計です。
B. 新事業進出要件
公募要領では「新事業進出」の定義として、少なくとも次の考え方が書かれています。 1.製品等の新規性要件 新事業で製造・提供する製品やサービスが、その会社にとって新しいこと。該当しない例として「既存製品の製造量・提供量を増やすだけ」「過去に作っていたものを再製造するだけ」「単に製造方法を変えるだけ」などが挙げられています。 2.市場の新規性要件 その製品・サービスの市場(顧客層のニーズや属性)が、その会社にとって新しいこと。該当しない例として「既存製品と市場が同一」「既存市場の一部だけ」「商圏が違うだけ」などが挙げられています。 3.新事業売上高要件 事業計画の最終年度に、新事業の売上高(または付加価値額)が、応募時点の総売上高の10%、または総付加価値額の15%を占める見込みであること、などが示されています(売上規模が大きい場合の別ルールも併記)。
C. 付加価値額要件
補助事業終了後の3〜5年の事業計画期間に、付加価値額(または従業員1人当たり付加価値額)の年平均成長率を4.0%以上増加させる見込みであることが要件です。
D. 賃上げ要件(未達だと返還の可能性)
従業員への賃上げ目標を設定し、それを達成することが求められます。賃上げ要件は「一人当たり給与支給総額」と「給与支給総額」の両方について、基準値以上の目標値を設定することが求められます。 さらに重要なのは、交付申請時までに、その目標値を従業員(または従業員代表)へ表明している必要があることです。表明していなかった場合は交付決定取消・補助金全額返還とされています。 達成判定は事業計画期間の最終年度で行われ、どちらの目標も達成できなかった場合は、未達成率に応じた返還が求められるルールが明記されています(一定の例外条件も記載)。
E. 事業場内最賃水準要件(毎年+30円、未達だと返還)
事業場内最低賃金水準の要件を満たす必要があります。 補助事業終了後の3〜5年の事業計画期間において、毎年、事業場内最低賃金が、補助事業実施場所の都道府県の地域別最低賃金より30円以上高い水準であることが要件です。 未達の場合は、一定の計算により返還を求める旨が明記されています。
F. ワークライフバランス要件(一般事業主行動計画の公表が必須)
次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」で公表していることが要件です。 公表には1〜2週間程度かかる、遅れによる申請期限延長は認めない、という注意喚起もあります。
G. 金融機関要件(資金提供を受ける場合のみ)
補助事業の実施にあたって金融機関等から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受け、「金融機関による確認書」を提出する必要があります。自己資金のみで行う場合は提出不要と明記されています。
H. 賃上げ特例を使う場合の追加要件(上限引上げ、未達だと「引上げ分」を返還)
賃上げ特例の適用を受ける場合、給与支給総額は基準値(年平均2.5%)に加えてさらに+3.5%(合計年平均+6.0%)以上、事業場内最低賃金は+30円に加えてさらに+20円(合計+50円以上)など、追加要件が示されています。 未達の場合は、賃上げ特例による「補助上限額引上げ分」の全額返還を求める、とされています。
IV. 補助額・補助率・対象経費
A. 補助上限額・補助下限額・補助率
補助上限額は従業員数により異なり、補助率は1/2、補助下限額は750万円です。
従業員数ごとの上限は、公募要領(第3回)で次のとおり示されています。
| 従業員数 | 補助上限額(通常) | 補助上限額(賃上げ特例) |
|---|---|---|
| 20人以下 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
B. どの費用が対象になるか(対象経費の全体像)
補助対象経費は、必要性と金額の妥当性が証拠書類で確認できるものに限られます。加えて、この補助金は「事業化に必要な事業資産(有形・無形)を含む」ことが重要とされ、経費として「機械装置・システム構築費」または「建物費」のいずれかを必ず含めなければならない、と明記されています。
公募要領に記載のある代表的な区分として、以下が示されています。
- 機械装置・システム構築費
- 建物費(建設・改修等)
- 運搬費
- 技術導入費
- 知的財産権等関連経費
- 外注費
- 専門家経費
- クラウドサービス利用費
- 広告宣伝・販売促進費
ここで初心者が間違えやすい点は、建物費は「購入」や「賃貸」は対象外で、「建設・改修」が中心だということです。
また、外注費には「補助金額全体の10%」という上限が示され、専門家経費には「上限100万円」が示されています。
広告宣伝・販売促進費にも上限の考え方があり、事業計画期間1年あたり「新事業の売上高見込み(税抜)の5%」を上限とする計算式が示されています。
C. 対象外経費(よく出る落とし穴)
公募要領には、家賃・水道光熱費などの固定費、一般管理費のように詳細が確認できない経費、消耗品、交際費、税務申告や決算書作成の費用、申請書類作成・提出の費用などが対象外として列挙されています。
「事業に係る自社の人件費・旅費」は対象外と明記されています。
汎用性が高いパソコン・タブレット等の本体費用も対象外の例として挙げられています。
車両(自動車等)も対象外として挙げられています。
D. 補助額のイメージ(代表例を1つ)
従業員40人(21〜50人区分)の会社が、新事業のために補助対象経費8,000万円を使う計画だとします。補助率が1/2なので、計算上の補助額は4,000万円です。上限も4,000万円(通常枠)なので、上限に収まる形になります。
注意点として、採択されても応募時に計上した経費がそのまま全額認められるとは限らず、採択後の交付申請で事務局が補助対象経費として精査し、結果として交付決定額が減額される可能性がある、と明記されています。
V. 公募スケジュールと申請方法
A. 公募スケジュール(第3回:2026年にかかる公募)
第3回公募の公募期間は、2025年12月23日(火)から2026年3月26日(木)18:00まで(厳守)です。
B. 申請方法(流れ)
公募要領上の事業スキームは、概ね次の流れで示されています。
- 公募
- 電子申請
- 採択通知
- 交付申請
- 交付決定
- 補助事業実施
- 実績報告
- 確定検査
- 請求
- 支払
- 事業計画期間(5年間の報告)
申請は電子申請で、GビズIDプライムアカウントが必要で、発行に1週間程度かかるため早めの取得が必要、とされています。
C. 補助事業の実施期間(いつまでに使い切るか)
補助事業実施期間は「交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)」とされています。
D. 口頭審査(必要に応じて実施)
口頭審査は、必要に応じて行うとされ、オンライン(Zoom等)で1事業者15分程度、申請事業者自身が対応し、社外の支援者やコンサル等の同席・対応は認めない、と明記されています。
また、予約は先着順で、申請締切間際だと選べる日時が限られる可能性がある、受験しなければ不採択、という運用も書かれています。
VI. 2026年度の主な変更点と今後の展望
A. ものづくり補助金との統合・再編の可能性
2026年度には、「ものづくり補助金」と統合・再編され、「新事業進出・ものづくり補助金(仮称)」や「革新的製品等開発・新事業進出支援補助金」として生まれ変わる可能性が指摘されています。この統合は、持続的な賃上げと高付加価値化支援の強化、そして中小企業の成長を加速させることを目的としています。新制度は、これまでのものづくり補助金と事業再構築補助金(新事業進出補助金の前身)の良い点を組み合わせたハイブリッド型になると予想されています。
B. 審査の厳格化
2026年度は、これまでの「救済」から「成長のための選抜」へと支援方針が転換され、事業計画の優劣がより厳しく審査される見込みです。口頭審査の厳格化や減点項目の明確化など、審査がより実態重視となる傾向が見られます。
C. 賃上げと付加価値創出のさらなる重視
大幅な賃上げを実施する事業者に対する補助上限額の引上げ幅が拡大される可能性があります。また、賃上げ実施事業者については、補助率(現行1/2)が引き上げられる可能性があります。企業には、賃上げと高い付加価値額の目標達成がこれまで以上に強く求められるようになるでしょう。
VII. 参考情報:関連する補助金制度
A. 事業再構築補助金
「事業再構築補助金」は、ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等が新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編、国内回帰、地域サプライチェーン維持・強靱化、またはこれらの取り組みを通じた規模の拡大など、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援するものです。中小企業新事業進出補助金の前身制度として位置づけられています。
B. ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
「ものづくり補助金」は、中小企業・小規模事業者が、生産性向上につながる革新的な新製品・新サービスの開発、試作品開発、生産プロセスの改善のための設備投資などを支援することを目的としています。製造業だけでなく商業・サービス業など幅広い業種が対象となります。
- 補助上限額:特例を利用した場合、最大4,000万円です。例えば、「製品・サービス高付加価値化枠」で2,500万円、または「グローバル枠」で3,000万円に加え、「大幅な賃上げに係る補助上限額引上の特例」で1,000万円が上乗せされる場合があります。
- 補助率:原則1/2ですが、従業員が5名以下(一部業種は20名以下)の小規模事業者や、先端設備導入計画、経営革新計画の認定を受けている場合は2/3に引き上げられます。
- 対象経費:単価50万円(税抜)以上の機械装置等の取得を含む設備投資が必須で、2025年度においては11種類の経費が対象です。
- 申請方法:申請はすべてインターネットを利用した「電子申請」で行われ、事前に「GビズIDプライムアカウント」の取得が必須です。
- 公募スケジュール:通年で公募が行われており、約3か月ごとに採択発表が行われています。2026年1月時点では、第22次の公募期間中であり、申請締切は2026年1月30日(金)17:00です。
VIII. まとめと推奨事項
中小企業新事業進出補助金は、中小企業が新たな挑戦を通じて成長し、賃上げを実現するための強力な支援制度です。2026年度には制度の大きな転換期を迎えることが予想されており、ものづくり補助金との統合や審査の厳格化、賃上げへのさらなる重点化が進む見込みです。申請を検討している場合は、最新の公募要領や詳細情報を継続的に確認し、早期からの事業計画の検討と専門家への相談を通じて、入念な準備を進めることが成功への鍵となります。
参考・出典
- 中小企業庁(本補助金の公募要領・制度案内の確認先)
- ミラサポPlus(公募要領・制度案内の確認先)
- 経済産業省(制度全体の位置づけ・関連施策の確認先)
- jGrants(電子申請システム)
- GビズID(GビズIDプライムアカウント取得)
- 「新事業進出指針」(新事業進出要件の根拠となる指針)
- 事業再構築補助金(前身制度としての位置づけの確認先)
- ものづくり補助金(関連制度としての確認先)
関連記事はこちら
| 事業所名 | 行政書士潮海事務所 |
|---|---|
| 英文名 | SHIOMI Administrative Solicitor office |
| 代表者 | 行政書士 潮海 俊吾(登録番号 第19272132号) |
| 所在地 | 京都府京都市中京区梅屋町492番地(麩屋町通) ハイツ京御所 201号室 (ご来所の際は事前にご連絡をお願いします。) |
| 取扱業務 | 許可・認可登録申請手続き 補助金・助成金申請サポート 法人コンサルティング業務 国際関係業務(阪行第20-93号) 遺言・相続業務 |
| TEL | 075-241-3150 |
| 営業時間 | 9:00~18:00【 定休日… 土・日・祝 】 ※メールでの相談は年中無休で受付けております。 |


