会社設立のメリット・デメリットについて

会社設立のメリット・デメリット

法人化すべきか迷っている方へ。メリット6つ・デメリット6つを、
社会保険料の会社負担まで数字で示して整理しました。2026年の制度改正にも対応しています。

800万円〜

法人化を検討する所得の目安

約7万円

赤字でもかかる均等割(年)

約14

社会保険料の会社負担

約6万円〜

設立の法定費用(合同会社)

行政書士 潮海俊吾
執筆・監修:行政書士 潮海 俊吾
京都府行政書士会(登録番号19272132号)
会社設立・補助金サポート実績 105社超|開業2019年
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会社設立(法人化)のメリットは、社会的信用・所得の分散による税負担の最適化・資金調達・決算期を自由に決められる・有限責任・欠損金の繰越が10年の6つ。デメリットは、赤字でもかかる均等割(年約7万円)・社会保険の強制加入と会社負担・事務負担と税理士費用・役員報酬を期中に変えられない・設立費用・やめるときのコストの6つです。
判断の分かれ目は所得だけではありません。課税所得がおおむね800万〜1,000万円を超える/取引先が法人格を求める/消費税の負担を調整したいのいずれかに当てはまるかで考えます。設立の法定費用は株式会社で約18万〜24万円、合同会社なら約6万〜10万円です。

30秒でわかる:法人化の判断材料

・法人化の目安は課税所得800万〜1,000万円。所得税は最高45%(+住民税10%)の累進課税、法人税は原則23.2%(中小法人の年800万円以下は15%)で、この差が効いてくるラインです。
・ただし税率だけで判断すると失敗します。法人は社長1人でも社会保険が強制加入で、保険料の約半分(報酬の約14%)を会社が負担します。役員報酬600万円なら会社負担だけで年約85万円です。
・赤字でも法人住民税の均等割 年約7万円がかかります。個人事業主にはない固定費です。
役員報酬は期首から3か月以内に決めたら、原則その期は変更できません(定期同額給与)。売上が読めない事業ほどこの制約は重くなります。
・欠損金(赤字)の繰越は個人の青色申告が3年、法人は10年。先行投資が大きい事業では法人が有利です。
・設立費用は株式会社 約18万〜24万円、合同会社 約6万〜10万円。電子定款なら印紙代4万円が不要です。
・2026年2月2日から、土日祝日・年末年始も設立日に指定できるようになりました(商業登記規則35条の4)。
・2026年4月1日以後開始事業年度から防衛特別法人税が始まりますが、500万円の基礎控除により多くの中小企業は実質負担なしです(申告は必要)。

音楽:魔王魂

本記事の内容
法人化を判断する3つの分岐

会社設立の6つのメリット

会社設立の6つのデメリット

数字で見る:社会保険料の会社負担

設立費用:自分で設立 vs 専門家に依頼

2026年に押さえておく制度改正

法人化のタイミングの決め方

よくある質問

まとめ

法人化を判断する3つの分岐

「所得がいくらになったら法人化すべきか」という問いは、実務ではあまり役に立ちません。所得は3つある分岐のうちの1つにすぎず、残る2つ(取引要件と消費税)のほうが決め手になるケースが多いためです。まず、自分がどの分岐に立っているかを確認してください。

取引先や元請から「法人でないと契約できない」と言われていますか?

言われている場合、所得がいくらであっても法人化は必須です。判断ではなく前提条件になります。建設業の元請、大企業のベンダー登録、一部の許認可、事務所や店舗の賃貸借契約などで実際に起きます。この場合は損得計算より、いつまでに登記を完了させるかから逆算してください。

課税所得がおおむね800万〜1,000万円を超えていますか?

超えているなら税負担の面で検討する価値があります。所得税は累進課税で最高45%(+住民税10%)、法人税は原則23.2%で中小法人の年800万円以下の部分は15%です。加えて、役員報酬として支払う分には給与所得控除も使えるため、所得を法人と個人に分けられる効果が出てきます。ただし後述の社会保険料の会社負担があるため、税率差だけで飛びつくと手取りが減ることがあります

消費税の課税事業者ですか、これから課税事業者になりますか?

法人成りすると、資本金1,000万円未満であれば新設法人として消費税の納税義務が免除される期間が生じ得ます。ただし前事業年度の上半期(特定期間)の課税売上高と給与等の支払額がいずれも1,000万円を超えると2期目から課税事業者になり、インボイス発行事業者の登録をすれば免税の効果はなくなります。取引先が課税事業者中心なら登録は事実上避けられないため、「法人成りで2年間消費税が免除される」という説明を鵜呑みにしないでください。具体的な有利不利は税理士に確認が必要です。

この記事の位置づけ

本記事は「法人化するかどうか」を判断するための記事です。「どの法人形態にするか」(株式会社・合同会社・NPO法人など7類型の比較)は、法人の種類と選び方で詳しく解説しています。判断がついた方はそちらへお進みください。

会社設立の6つのメリット

1. 社会的な信用度が上がる

会社は、目的・商号・所在地・資本金の額・代表者・役員などを登記することで成立します(会社法911条3項ほか)。登記事項証明書を取れば誰でも会社の基本情報を確認できるため、取引先から見た確認コストが下がります。企業によっては法人としか取引しない社内規程を持つところもあり、その場合は会社を作らないとそもそも土俵に上がれません。採用面でも、求職者が応募先を調べやすくなる効果があります。

2. 所得を分散して税負担を最適化できる

個人事業主は事業所得すべてに累進課税の所得税がかかりますが、法人化すると法人の所得役員報酬(個人の給与所得)に分けられます。役員報酬は会社の損金になり、受け取る個人側では給与所得控除が使えるため、同じ利益でも税負担の設計余地が生まれます。家族を役員や従業員にして所得を分散する方法もありますが、実態のない支給は否認されるため注意が必要です。

中小法人には年800万円以下の所得に対する15%の軽減税率がありますが、これは租税特別措置法による時限措置で、現在の適用期限は令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度です。令和7年度税制改正により、所得が年10億円を超える事業年度は17%に引き上げられ、グループ通算制度の適用法人は特例の対象外となりました。

3. 資金調達の選択肢が広がる

法人は貸借対照表・損益計算書の作成が前提になるため、金融機関にとって審査しやすい相手になります。個人事業主でも融資は受けられますが、法人のほうが決算書ベースで評価されやすく、日本政策金融公庫の創業融資、信用保証協会の保証付融資、補助金の採択後の資金繰りまで一貫して組み立てやすくなります。株式会社であれば第三者からの出資(増資・VC)も選択肢に入ります。

4. 決算期を自由に決められる

個人事業主の計算期間は1月1日〜12月31日と決まっていますが、法人は定款で事業年度を自由に設定できます。繁忙期を避けて決算作業を行う、在庫が少ない月を期末にする、消費税の免税期間を最大化する、といった設計が可能です。設立時に決めた決算期は後から変更もできますが、手間がかかるため最初に検討しておく価値があります。

5. 責任が出資額の範囲に限定される

個人事業主は事業上の債務について全財産で責任を負います。株式会社・合同会社であれば、出資した金額の範囲内での有限責任です。ただし、金融機関の融資で代表者が連帯保証をしている場合、その債務は個人に及びます。「法人にすれば借金から逃げられる」という理解は誤りです。なお経営者保証については、一定の要件を満たす場合に保証を求めない取扱い(経営者保証に関するガイドライン等)もあるため、融資の際に確認してください。

6. 赤字を10年間繰り越せる

見落とされがちですが、実務では効きます。青色申告の個人事業主が損失を繰り越せるのは3年ですが、法人(青色申告)は10年です。初期投資が大きく、黒字化まで数年かかる事業ほど法人が有利になります。設備投資や研究開発を伴う事業、補助金を使って大きく投資する事業では、この差が納税額に直結します。

会社設立の6つのデメリット

メリットだけを並べた解説は珍しくありませんが、実際にご相談を受けていて「聞いていなかった」と言われるのは、たいていこちら側です。特に2番目と4番目は、法人化してから気づくと修正が効きません。

1. 赤字でも毎年かかる費用がある

法人住民税には所得に関係なくかかる均等割があります。資本金等の額1,000万円以下・従業者数50人以下の法人であれば、道府県民税と市町村民税を合わせて年約7万円が標準的な水準です。赤字でも、休眠していなければ支払う必要があります。資本金を大きくすると均等割も上がるため、資本金の設定は慎重に決めてください。

2. 社会保険が強制加入になり、会社が保険料の半分を負担する

法人は、役員が代表者1人だけであっても健康保険・厚生年金の適用事業所になります(報酬がゼロの場合等を除く)。保険料は労使折半で、会社が半分を負担します。個人事業主の国民健康保険・国民年金には事業主負担という概念がないため、ここが法人化で最も大きく増えるコストです。具体的な金額は後述します。

将来の年金額が増える、傷病手当金が使えるといった見返りはありますが、キャッシュフロー上は確実に重くなります。「税金は減ったのに手元のお金は減った」という事態は、ここを計算に入れていないときに起きます。

3. 事務負担と専門家費用が増える

法人税の申告は所得税の確定申告より複雑で、税理士へ依頼するのが一般的です。顧問料と決算料で年間数十万円かかるのが通常で、これは法人化で確実に増える固定費です。加えて、社会保険の各種手続き、労働保険の年度更新、株主総会の開催と議事録の作成、役員の任期満了に伴う変更登記(株式会社は最長10年)など、法律上求められる手続きが増えます。

なお、2026年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税の申告も加わります。(基準法人税額-年500万円)×4%で、基礎控除により多くの中小企業は税額ゼロですが、税額がゼロでも申告書の提出は必要です。

4. 役員報酬を期の途中で自由に変えられない

役員報酬を損金に算入するには、原則として事業年度開始の日から3か月以内に決定し、その事業年度は毎月同額を支給する必要があります(定期同額給与)。業績が good だったから期の途中で増額する、といった調整は基本的にできません(増額分が損金にならない)。

個人事業主は、稼いだお金をそのまま生活費に回せます。法人化すると、会社のお金と個人のお金が明確に分離され、社長個人が使えるのは決めた役員報酬だけになります。売上の変動が大きい事業ほど、この制約は実務上のストレスになります。

5. 設立費用がかかる

個人事業主の開業は税務署に開業届を出すだけで費用ゼロですが、法人は株式会社で約18万〜24万円、合同会社で約6万〜10万円の法定費用がかかります(内訳は後述)。専門家に依頼する場合はその報酬が加わります。

6. やめるときにもコストと手間がかかる

意外と語られませんが、法人はたたむのが個人事業より大変です。解散・清算には、株主総会の決議、解散登記と清算人選任登記、官報公告、債権者保護手続、清算確定申告、清算結了登記といった手続きが必要で、登録免許税や官報掲載費用、専門家報酬がかかります。休眠にしても均等割の免除には自治体の手続きが必要です。「合わなかったら戻せばいい」という発想で始めると、想定外の負担になります。

数字で見る:社会保険料の会社負担

法人化の損得を語るとき、税率の比較だけで終わっている記事が多いのですが、実務で効くのはこちらです。社長1人の会社でも、役員報酬を出す限り社会保険料は必ず発生します。

2026年度の保険料率は、厚生年金が18.3%(2017年9月以降固定)、協会けんぽの健康保険料率が全国平均9.9%(都道府県ごとに異なります)。合計おおむね28%前後を労使で折半するため、会社負担はおよそ報酬の14%です。40歳以上65歳未満は介護保険料(2026年度 全国一律1.62%)が加わり、さらに2026年4月分からは全国一律の子ども・子育て支援金(0.23%)も上乗せされます。

役員報酬(年額)標準報酬月額の目安社会保険料 労使合計(年)うち会社負担(年)
360万円(月30万円)30万円約101万円約51万円
600万円(月50万円)50万円約169万円約85万円
960万円(月80万円)80万円約271万円約135万円

※厚生年金18.3%+健康保険9.9%=28.2%で試算した概算です。健康保険料率は都道府県により異なり、40歳以上は介護保険料(1.62%)、2026年4月分からは子ども・子育て支援金(0.23%)が加わります。賞与を支給する場合はさらに増えます。実額は協会けんぽの保険料額表でご確認ください。

出典:日本年金機構「厚生年金保険料額表」(厚生年金保険料率18.3%/平成29年9月分以降)、全国健康保険協会「令和8年度保険料率」(健康保険料率は都道府県別・全国平均9.9%、介護保険料率1.62%、令和8年4月分からの子ども・子育て支援金0.23%)

試算の順番を間違えないでください:「法人化で税金がいくら減るか」ではなく、「①減る税金 -(②社会保険料の会社負担の増加 + ③均等割 + ④税理士費用の増加)」で判断してください。②③④の合計は、役員報酬600万円のケースで年100万円を優に超えます。この計算をせずに法人化して「手取りが減った」となるのが、最も多い失敗です。具体的な試算は税理士にご相談ください。

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設立費用:自分で設立 vs 専門家に依頼

株式会社の設立にかかる法定費用は、定款にかかる費用と登記にかかる費用の2つです。専門家に依頼すると報酬が発生しますが、電子定款により印紙代4万円が不要になるため、差額は見た目ほど大きくなりません

費用項目自分で設立(紙定款)専門家に依頼(電子定款)
定款認証手数料15,000〜50,000円15,000〜50,000円
定款の謄本代約2,000円約2,000円
印紙代40,000円0円(電子定款)
登録免許税150,000円〜150,000円〜
専門家報酬0円66,000円〜(税込)
合計の目安約207,000〜242,000円約233,000〜268,000円

※定款認証手数料は資本金の額等で変動します(100万円未満:3万円/100万円以上300万円未満:4万円/300万円以上:5万円)。2024年12月1日以降、資本金の額等が100万円未満の株式会社のうち、①発起人全員が自然人で3人以下 ②発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の定款記載がある ③取締役会を置く旨の定款記載がない、の3要件をすべて満たす場合は1万5,000円です(公証人手数料令35条1号ただし書)。
※登録免許税は資本金の額×0.7%(最低15万円)。
合同会社は公証人の定款認証が不要で、登録免許税も最低6万円のため、法定費用は約6万〜10万円に収まります。

根拠:公証人手数料令第35条(令和6年政令第353号による改正・2024年12月1日施行)、登録免許税法別表第一

自分で電子定款を作る場合の落とし穴:
印紙代4万円を節約するために自分で電子定款を作成する場合、PDF変換ソフト、マイナンバーカード(電子証明書)、ICカードリーダーの準備が必要で、結果的にそれ以上の手間と費用がかかるケースがほとんどです(→ 電子定款とは)。

専門家に依頼する判断基準

費用差は3万円弱です。判断材料になるのは金額よりも、①定款の目的欄が将来の許認可要件を満たしているか、②設立日を指定したいか、③本店をどこに置くか(自宅の住所公開をどうするか)の3点です。特に①は、後から目的を追加すると変更登記の登録免許税3万円が別途かかるため、最初に設計しておく価値があります。建設業・産廃・宅建業・飲食・古物などの許認可を予定している場合は、設立前にご相談ください。

2026年に押さえておく制度改正

これから設立する方に直接関係する改正が3つあります。いずれも施行済みです。

① 土日祝日・年末年始も「設立日」にできる(2026年2月2日〜)

従来、会社の設立日は法務局が登記申請を受理した日になるため、閉庁日を設立日にはできませんでした。2026年2月2日施行の改正商業登記規則により、指定したい休日の直前の開庁日(平日)の開庁時間内に登記申請を受け付けてもらい、その日を「指定登記日」として求めることで、休日を設立日にできます。一粒万倍日や天赦日、記念日、1月1日などを選べるようになりました。株式会社だけでなく持分会社や一般社団法人等にも適用されます。

注意点は「早めに出しておけばよい」わけではないことです。直前の開庁日に受付されなければならないため、定款認証や出資金の払込みを含めた逆算スケジュールが必要になります。

根拠:商業登記規則第35条の4(2026年2月2日施行)/令和8年1月21日付け法務省民商第9号 法務省民事局長通達

② 防衛特別法人税の開始(2026年4月1日以後開始事業年度〜)

法人税に上乗せされる付加税です。計算式は(基準法人税額-年500万円)×4%。年500万円の基礎控除があるため、法人税額が500万円以下の多くの中小企業には実質的な負担が生じませんが、税額がゼロでも申告書の提出は必要です。判定は税額控除を適用する「前」の基準法人税額で行うため、賃上げ促進税制等で納付額を圧縮していても課税されることがあります。

根拠:令和7年度税制改正(防衛財源確保法の改正により創設)。適用は令和8年4月1日以後に開始する事業年度から

③ 代表取締役の住所を登記事項証明書で一部非表示にできる(株式会社のみ)

2024年10月1日施行の改正商業登記規則により、代表取締役等の住所を、登記事項証明書上は行政区画(○○市、東京都○○区など)までの表示にとどめる措置を申し出できます。自宅を本店にして起業する方のプライバシー対策として有効です。

ただし、対象は株式会社のみで合同会社などの持分会社は使えません。また、この申出は設立登記・本店移転・代表者の就任・住所変更の登記と同時にしか行えません。設立時に出し忘れると次の機会まで待つことになるため、形態を決める段階で意識しておく必要があります。

根拠:商業登記規則第31条の3(2024年4月16日公布・同年10月1日施行)/法務省「代表取締役等住所非表示措置について」

法人形態ごとの詳しい比較は法人の種類と選び方で解説しています。

法人化のタイミングの決め方

「するかどうか」が決まったら、次は「いつ」です。設立日と決算期の決め方には、実務上のセオリーがあります。

設立日は「区切り」より「準備が整った日」

1月1日や4月1日にこだわる方は多いのですが、法人の事業年度は設立日から始まるため、区切りのよい日である必要はありません。むしろ個人事業の廃業手続き、取引先への通知、許認可の取り直し、口座開設、社会保険の新規適用が間に合う日を選ぶほうが実務的です。縁起のよい日を設立日にしたい場合は、2026年2月2日以降は休日も指定できるようになったため、選択肢が広がっています。

決算期は「設立月の前月末」が基本形

第1期を最長(12か月)にとるなら、決算期は設立月の前月末に置きます(4月設立なら3月決算)。これにより第1期の期間を最大化でき、消費税の免税期間を活かしやすくなります。ただし繁忙期と決算作業が重なると実務が回らないため、棚卸しがしやすい月・資金に余裕がある月という観点も併せて検討してください。

許認可がある事業は「設立前」に相談する

建設業、産業廃棄物処理業、宅地建物取引業、飲食業、古物商、旅行業などの許認可がある場合、法人化すると許可は原則として取り直しになります(一部に承継の制度があります)。個人で取った許可がそのまま法人に引き継がれるわけではないため、無許可営業の空白期間が生まれないよう、設立と許可申請のスケジュールを並行して組む必要があります。定款の目的欄の書き方も許認可の要件に関わります。

法人設立後に使える補助金も視野に

設立後は、販路開拓やDXに使える補助金が選択肢に入ります。ただし創業から一定期間の決算実績や、従業員が1名以上いることを要件とする制度もあるため、「法人を作ってすぐ大型補助金」は制度上難しいのが実情です。創業初期は小規模事業者持続化補助金が現実的な選択肢です。設立段階から使える制度と時期を逆算しておくことをお勧めします。

よくある質問

Q. 会社設立のメリットは何ですか?

主に6つです。①社会的信用の向上、②所得を法人と役員報酬に分けられる税負担の最適化、③金融機関からの資金調達のしやすさ、④決算期を自由に設定できる、⑤出資額の範囲内で責任を負う有限責任、⑥赤字(欠損金)を10年間繰り越せる(個人の青色申告は3年)ことです。

Q. 会社設立のデメリットは何ですか?

主に6つです。①赤字でも毎年かかる法人住民税の均等割(年約7万円)、②社会保険が強制加入になり保険料の半分を会社が負担すること、③会計・税務・社会保険などの事務負担と税理士費用の増加、④役員報酬を期の途中で自由に変更できないこと(定期同額給与)、⑤設立費用、⑥解散・清算にも手続きとコストがかかることです。特に②と④は、法人化してから気づいても修正が難しい項目です。

Q. どのくらいの所得で法人化を検討すべきですか?

一つの目安は、課税所得がおおむね800万〜1,000万円を超えるあたりです。所得税は最高45%(+住民税10%)の累進課税、法人税は原則23.2%(中小法人の年800万円以下は15%)で、この差が効いてくるラインです。ただし所得は判断材料の1つにすぎません。取引先から法人格を求められている場合は所得に関係なく法人化が必要ですし、逆に社会保険料の会社負担・均等割・税理士費用の増加を差し引くと、税率差だけでは有利にならないこともあります。

Q. 社長1人の会社でも社会保険に入る必要がありますか?

必要です。法人は、役員が代表者1人だけであっても健康保険・厚生年金の適用事業所になります(報酬がゼロの場合等を除く)。保険料は労使折半で、会社が半分を負担します。2026年度の料率は厚生年金18.3%、協会けんぽの健康保険が全国平均9.9%で、合計約28%を折半するため会社負担は報酬の約14%です。役員報酬600万円なら会社負担だけで年約85万円になります。

Q. 法人化すると消費税が2年間免除されると聞きましたが本当ですか?

条件つきです。資本金1,000万円未満で設立すれば新設法人として納税義務が免除される期間が生じ得ますが、前事業年度の上半期(特定期間)の課税売上高と給与等の支払額がいずれも1,000万円を超えると2期目から課税事業者になります。また、インボイス発行事業者の登録をすれば免税の効果はなくなります。取引先が課税事業者中心であれば登録は事実上避けにくいため、この点は税理士にご確認ください。

Q. 株式会社と合同会社、設立費用はどちらが安いですか?

合同会社のほうが安く、法定費用は約6万〜10万円です。公証人の定款認証が不要で、登録免許税も最低6万円のためです。株式会社は約18万〜24万円ですが、社会的信用や資金調達の面で有利で、代表者住所の非表示措置を使えるのも株式会社だけです。どちらが適しているかは事業の方針によります。

Q. 個人で取った建設業許可は法人にそのまま引き継げますか?

原則として引き継げず、法人として新たに許可を取り直すことになります(一定の要件のもとで事業承継の認可を受けられる制度もあります)。無許可営業の空白期間が生じないよう、法人設立と許可申請のスケジュールを並行して組む必要があります。定款の目的欄の記載も許可要件に関わるため、設立前にご相談ください。

Q. 土日を会社の設立日にできますか?

できます。2026年2月2日施行の改正商業登記規則(35条の4)により、指定したい休日の直前の開庁日(平日)の開庁時間内に設立登記を申請し、その日を指定登記日として求めることで、土日祝日や年末年始を設立日にできます。ただし「早めに出しておけばよい」わけではなく、直前の開庁日に受付される必要があるため、定款認証や払込みから逆算したスケジュール管理が必要です。

まとめ

・メリットは信用・所得分散・資金調達・決算期の自由・有限責任・欠損金10年繰越の6つ
・デメリットは均等割(年約7万円)・社会保険の会社負担・事務負担と税理士費用・定期同額給与の制約・設立費用・解散コストの6つ
・判断の分岐は①取引先の要求 ②課税所得800万〜1,000万円 ③消費税の3つ。所得だけで決めない
・試算は「減る税金 -(社会保険料の会社負担+均等割+税理士費用)」で行う
・設立費用は株式会社 約18万〜24万円/合同会社 約6万〜10万円。電子定款で印紙代4万円が不要
・2026年2月2日から休日も設立日に指定できる。自宅が本店なら株式会社の住所非表示措置も検討する
・許認可がある事業は、法人化で許可の取り直しが必要になるため設立前に相談する

どの法人形態を選ぶかは法人の種類と選び方、定款の電子化については電子定款とはをご覧ください。

最終確認日:2026年8月19日。本記事は会社法・商業登記規則・公証人手数料令・法人税法および協会けんぽ/日本年金機構の公表資料に基づいて作成しています。税務の具体的な有利不利は個別事情により異なるため、税理士へのご相談をお勧めします。

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