目次
2026年度版:中小企業・観光・インバウンド向け主要補助金ガイド – 成長と賃上げを後押しする国家戦略
1. はじめに:2026年度補助金制度の全体像と国家戦略の転換
1.1. 国家支援方針の明確化:コロナ禍の「救済」から「成長・賃上げ」への重点投資
2026年度(令和8年度)の日本政府による中小企業向け補助金制度は、国家支援方針の明確な転換点を示すものとなります。これまでのコロナ禍における「救済」フェーズから、「成長企業への重点投資」へと軸足が移され、「賃上げを前提とした、規模拡大(スケールアップ)への挑戦」が強く推奨される見込みです。これは、持続的な経済成長と生産性向上を目指す政府の強い意志を反映しています。
1.2. 観光・インバウンド分野への予算大幅増額の背景
国内経済の活性化において、観光・インバウンド分野は引き続き重要な柱と位置づけられています。
- 1.2.1. 観光庁関係予算:前年度比約2.4倍の1,383億4,500万円
2026年度の観光庁関係予算は、前年度比約2.4倍となる1,383億4,500万円が計上され、閣議決定されました。この大幅な予算増額は、日本の観光産業をさらに発展させるための国家的な取り組みを示しています。
- 1.2.2. 国際観光旅客税(出国税)の引き上げ分充当
この予算増額の背景には、国際観光旅客税(出国税)の引き上げ分が新たな施策に充当されることが挙げられます。これにより、観光地の受入環境整備や地域経済への波及効果を最大化するための施策が強化されます。
1.3. 本ガイドの目的:中小企業・観光・インバウンド関連の主要補助金解説
本ガイドでは、2026年度に中小企業や観光・インバウンド関連事業者が活用できる可能性のある主要な補助金制度について、その目的、対象、支援内容、公募期間などを網羅的に解説します。これらの情報を活用し、自社の成長戦略や事業展開に最適な補助金を見つける一助となれば幸いです。
2. 中小企業向け主要補助金制度(賃上げ・規模拡大・生産性向上)
2026年度の中小企業向け補助金は、「賃上げを前提とした、規模拡大(スケールアップ)への挑戦」に重点が置かれ、コロナ禍での「救済」フェーズから「成長企業への重点投資」へと国の支援方針が明確化されています。
2.1. 大規模投資を通じた成長・賃上げ牽引
2.1.1. 大規模成長投資補助金(中堅・中小スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金)
地域経済を牽引し、多くの雇用を生み出す中堅企業および中堅を目指す企業が主な対象です。
- 対象:地域で多くの雇用を生み出し、賃上げを牽引する中堅企業および中堅を目指す企業。
- 支援内容:工場新設や大規模な物流拠点整備など、20億円(100億宣言企業の場合は15億円)を超える投資を伴う事業を支援します。
2.1.2. 中小企業成長加速化補助金
売上高100億円超を目指す中小企業の大胆な投資を支援する制度です。
- 対象:売上高100億円超を目指す中小企業。
- 補助上限:最大5億円。
- 重点項目:賃上げへの貢献、輸出による外貨獲得、域内の仕入れによる地域経済への波及効果が大きい企業が対象となります。
- 公募期間:2026年2月24日から3月26日まで2次公募の申請を受け付けています。
2.2. 革新的な製品開発・サービス改善・IT導入
2.2.1. ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
中小企業が行う新製品・新サービスの開発や生産工程の改善にかかる設備投資などを支援します。
- 支援内容:新製品・新サービスの開発、生産工程の改善にかかる設備投資などを支援します。
- 公募情報:2026年1月30日締切の第22次公募の詳細が発表されています。
2.2.2. IT導入補助金
中小企業や小規模事業者のITツール導入を支援し、業務効率化やDX推進を後押しします。
- 支援内容:中小企業や小規模事業者がITツールを導入する経費の一部を補助します。
2.2.3. 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が販路開拓や生産性向上に取り組むための費用を支援します。
- 支援内容:小規模事業者が販路開拓や生産性向上に取り組むための費用を支援します。
- 公募期間:2026年1月23日より申請受付が開始され、3月31日に締め切られます。
2.3. 新事業展開と省力化投資
2.3.1. 中小企業新事業進出補助金(事業再構築補助金の後継制度)
既存事業と異なる新たな事業への挑戦を後押しし、新市場・高付加価値事業への進出を通じて中小企業の生産性・収益向上、ひいては従業員の賃上げにつなげることを目的とした制度です。事業再構築補助金の後継制度と位置付けられています。
- 目的:既存事業と異なる新たな事業への挑戦を後押しし、新市場・高付加価値事業への進出を通じて中小企業の生産性・収益向上、ひいては従業員の賃上げにつなげること。
- 公募期間:2025年12月23日から2026年3月26日まで第3回目の公募期間となっています。
2.3.2. 中小企業省力化投資補助金
中小企業の省力化・自動化を軸とした支援策は、人手不足の解消と生産性向上を目指し、2026年度も継続される見込みです。
- 支援内容:中小企業の省力化・自動化を軸とした投資を支援します。
- 継続見通し:2026年度も継続される見込みです。
3. 観光・インバウンド関連主要補助金制度(観光庁中心)
2026年度の観光庁関係予算は、前年度比約2.4倍の1,383億4,500万円と大幅に増額されており、国際観光旅客税(出国税)の引き上げ分が充当されます。これは、観光産業のさらなる活性化と持続可能な観光地づくりに向けた強いコミットメントを反映しています。
3.1. 観光庁の重点方針と3つの柱
観光庁の2026年度の主な柱は以下の3点です。
- 3.1.1. 「インバウンドの受入れと住民生活の質の確保との両立」
オーバーツーリズム対策を含め、観光客と地域住民双方にとって持続可能で質の高い観光を実現することを目指します。
- 3.1.2. 「地方誘客の推進による需要分散」
大都市圏に集中しがちなインバウンド需要を地方へと分散させ、地域経済の活性化を図ります。
- 3.1.3. 「観光産業の活性化」
観光産業全体の生産性向上、人材確保・育成、高付加価値化を推進し、産業の競争力を強化します。
3.2. 地域観光資源のコンテンツ化と誘客促進
3.2.1. 観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業(予算49億円)
地域資源を活用し、インバウンドのニーズに応える「稼げる」コンテンツ造成を支援します。
- 目的:地域資源を活用した観光コンテンツの造成、情報発信、販路開拓などを支援します。
- 要件:インバウンドのニーズを踏まえた「稼げる」コンテンツであることが求められ、造成するコンテンツの性質に合わせて3つの類型が設定されています。また、コンテンツ造成と合わせて「ガイドの質的向上」も重視されており、地域連携や旅行会社との連携が要件となる可能性があります。
- 3つの類型:
- 類型1:新創出型:地域資源を活用した観光コンテンツの新規造成を支援します。
- 類型2:品質向上型:既存コンテンツをより高単価なインバウンド向けツアーへブラッシュアップする取り組みを支援します。
- 類型3:分野特化型:ガストロノミーなどの特定分野に特化したコンテンツ造成を支援します。
3.3. インバウンド受入環境の整備と高度化
3.3.1. インバウンド対応設備投資補助金
インバウンド需要に対応するための設備投資を支援する補助金が2026年度も予定されています。
- 対象:インバウンド需要に対応するための設備投資。
- 補助率:中小企業は2分の1、小規模事業者等は3分の2。
- 補助上限:3,000万円(賃上げ特例で最大1,000万円上乗せ可能)。
3.3.2. インバウンド受入環境整備高度化事業
多言語案内、無料Wi-Fi、キャッシュレス決済の導入、バリアフリー改修など、観光地の受入環境整備を総合的に支援します。
- 支援内容:多言語案内、無料Wi-Fi、キャッシュレス決済の導入、バリアフリー改修など、観光地の受入環境整備を支援します。
- 対象主体:地方公共団体やDMO(観光地域づくり法人)が策定する「高度化計画」に基づく取り組みが対象となり、個社単独での申請は原則不可です。
3.3.3. ユニバーサルツーリズムの促進に向けた環境整備
高齢者や障がい者などが安心して旅行できる環境を整備するための予算が大幅に増額されています。
- 目的:高齢者や障がい者などが安心して旅行できる環境を整備すること。
- 支援内容:宿泊施設や観光施設のバリアフリー改修支援、旅行商品の造成支援、情報発信・機運醸成などが強化される見込みです。
- 予算:対前年度比13.3倍と大幅増額される可能性が高いです。
3.3.4. 免税制度の「リファンド方式」移行支援
外国人旅行者向け消費税免税制度の「リファンド方式」への移行に伴い、空港などでの環境整備や周知・広報活動が支援されます。
- 支援内容:空港などでの環境整備や周知・広報活動が支援されます。
3.4. 観光産業の人材不足対策と生産性向上
3.4.1. 観光地・観光産業における人材不足対策事業
インバウンドの急回復による宿泊業や観光業の人手不足に対応するため、大幅に予算が増額されています。
- 目的:インバウンド急回復による宿泊業や観光業の人手不足に対応し、人材確保・定着を促進すること。
- 支援内容:人材確保・定着の促進、設備投資支援(自動チェックイン機や配膳・清掃ロボットなどの省力化機械・自動化設備の導入)、外国人材の受入れ、経営の高度化といった4つの軸で総合的に支援されます。宿泊業における従業員の待遇改善策の検討も推進されます。
- 設備投資支援上限額:1,000万円に倍増される予定です。
- 後継事業:「観光地・観光産業における省力化投資補助事業」として2026年から開始される予定です。
3.4.2. 中小企業省力化投資補助金(一般型・カタログ型) ※インバウンド関連にも活用可能
人手不足解消と生産性向上のため、省力化に資する機械装置等の導入を支援するもので、全業種の中小企業が対象です。
- 目的:人手不足解消と生産性向上。
- 支援内容:省力化に資する機械装置等の導入を支援します。
- 活用事例:宿泊業では、宿泊管理システム(PMS)や自動チェックイン機などの導入事例があります。
3.5. オーバーツーリズム対策と持続可能な観光地経営
3.5.1. オーバーツーリズム対策・観光地の受入環境整備の促進(予算100億円、前年度比約8.3倍)
オーバーツーリズムの未然防止・抑制を含む観光地の受入環境整備に対し、前年度比約8.3倍の100億円が充てられます。
- 目的:オーバーツーリズムの未然防止・抑制を含む観光地の受入環境整備を促進し、観光客と住民生活の質の確保との両立を目指します。
- 対象主体:地方公共団体や観光地域づくり法人(DMO)が地域一体で行う多角的な取り組みが支援対象となります。
3.5.2. オーバーツーリズム対策等観光交通確保事業
地域住民と観光客の移動環境の整備、および地方部における観光二次交通の高度化を支援する事業です。
- 支援内容:地域住民と観光客の移動環境整備、地方部における観光二次交通の高度化を支援します。
3.5.3. 地域一体となった持続可能な観光地経営推進事業
オーバーツーリズム対策を含む、より包括的な地域マネジメントへの支援が示されており、地域全体でのデータに基づいた課題把握や戦略策定、住民合意形成、具体的な対策の計画・実施などが推進されます。
- 支援内容:地域全体でのデータに基づいた課題把握、戦略策定、住民合意形成、具体的な対策の計画・実施などを支援します。
4. その他の関連補助金と地域独自の支援策
4.1. 中小企業庁の補助金(インバウンド関連活用例)
4.1.1. 中小企業新事業進出補助金
新分野への進出や事業再構築を後押しするもので、設備投資やシステム開発、広告費などが対象となります。インバウンド需要を取り込むための新たな事業展開にも活用可能です。
4.1.2. ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(グローバル枠)
革新的な製品・サービス開発や海外展開・インバウンド対応による生産性向上を支援し、設備・システム投資、試作、展示会、広告宣伝などが対象です。インバウンド対応の場合、販売先の一定割合を訪日客向けとする要件があります。
4.1.3. IT導入補助金
業務効率化やDX推進のため、ITツールの導入費用の一部を支援します。多言語対応システムの導入や予約システムの刷新など、インバウンド対応にも広く活用できます。
4.1.4. 小規模事業者持続化補助金
販路開拓や業務効率化の取り組みを支援するもので、広報費やWebサイト関連費など幅広い経費が対象となります。インバウンド向けのプロモーション活動や多言語対応のWebサイト制作にも活用が期待されます。
4.2. 地方公共団体による独自の支援策
4.2.1. 東京都の補助金
- インバウンド対応力強化支援事業補助金:東京都内の宿泊施設、飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設などが、訪日外国人旅行者のニーズに対応した利便性や快適性向上を目的に実施する新たな取り組みを支援します。申請期間は2025年4月1日から2026年3月31日までです。
- 観光関連事業者デジタル化レベルアップ支援事業補助金:東京都内の中小企業者が、DXナビゲーターの助言を受けて行うデジタル技術活用を支援します。
4.2.2. 石川県小松市:経営モデルチェンジ支援事業補助金【グローバル化支援事業】
石川県小松市では、インバウンド需要関連の事業を含むグローバル化支援を目的とした補助金が提供されています。
- 目的:インバウンド需要関連の事業を含むグローバル化支援。
- 補助上限:50万円で補助率は2分の1です。
4.3. 能登半島地震からの観光再生支援事業
能登半島地震からの復興に向け、観光地の再生支援として、経営高度化計画の策定支援、人材確保、誘客コンテンツ造成、情報発信などを一体的に支援します。
5. 申請に向けた留意事項と今後の展望
5.1. 最新情報の確認と早期準備の重要性(公募開始時期、詳細要件)
多くの補助金は2026年度予算案の閣議決定段階であり、具体的な公募開始時期や詳細な要件は今後発表される予定です。例年、年明け以降に事務局が決定され、公募要領が発表される傾向があります。申請にあたっては、早めの情報収集と準備が極めて重要となります。
5.2. 賃上げ要件が設けられる補助金の増加
政府の成長戦略の一環として、賃上げ要件が設けられる補助金が今後さらに増加する見込みです。補助金申請を検討する際には、賃上げ計画も含めた事業戦略を立てることが重要となるでしょう。
5.3. 経済産業省、中小企業庁、観光庁、地方公共団体からの情報収集の徹底
これらの補助金は、観光庁だけでなく、経済産業省や中小企業庁、さらには各地方公共団体からも提供されています。各省庁や関係機関の公式サイトから、最新の公募情報、要件、スケジュールなどを徹底的に確認し、自社に最適な補助金制度を積極的に活用することが成功への鍵となります。
参考・出典
- 経済産業省(概算要求・予算、補助金全体方針、各種支援策)
- 中小企業庁(ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金、事業再構築・後継制度等)
- 中小企業基盤整備機構(新事業進出補助金の特設サイト、各種支援制度の公式情報)
- 観光庁(観光庁関係予算、受入環境整備、高度化事業、観光DX、人材不足対策、オーバーツーリズム対策等の公募情報)
- 国土交通省(観光庁所管事業の公募・採択情報、関連施策)
- 各地方公共団体(東京都・大阪府・京都府等の観光・インバウンド関連補助制度、自治体独自支援策)
- 補助金の個別「公募要領」「交付規程」「申請の手引き」「Q&A」「特設サイト」
- 国際観光旅客税(出国税)に関する政府資料(制度概要・税収の活用方針)
- 各制度の電子申請システム(GビズID、jGrants、各特設サイトの申請マイページ等)
2026年1月7日現在の情報であり、最新情報は直接確認してください。
