不正受給の4つの典型例と、悪意がなくても取消・返還につながる5つの落とし穴。
「知らなかった」では済まない部分を、行政書士が整理します。
101件
採択後に除外された実例
18か月
未達時の減点期間
加算金あり
不正受給の返還
5年
採択後の報告義務
▶ この記事の結論
補助金の不正受給は、返還だけでは済みません。加算金の請求、事業者名の公表、詐欺罪での立件に至った事例があります。
一方で、実務上より多いのは「不正のつもりはなかったのに、取消・返還になった」ケースです。要件を満たさないまま申請していた、交付決定前に発注していた、支援者を申告していなかった、賃上げ目標に届かなかった。いずれも悪意の有無を問わず処分の対象になります。
この記事では、典型的な不正受給の4類型と、悪意がなくても取消につながる5つの落とし穴を分けて整理します。
30秒でわかる:補助金の不正受給と取消リスク
・不正受給の典型は4つ。証拠書類の改ざん/売上の過少申告/事業実態の偽装/支給要件と無関係な理由による申請。
・不正が認定されると、補助金の返還に加えて加算金が課され、事業者名が公表されることがあります。悪質な場合は詐欺罪として刑事事件になります。
・「頼まれて名前を貸しただけ」でも責任を問われます。受給者本人が返還義務を負う立場だからです。
・実務で多いのは悪意なき取消です。持続化補助金 第18回では、採択後に要件を満たさないと判明した101件が採択対象から除外されました。
・交付決定前の発注・契約は補助対象外です。採択通知は交付決定ではありません。
・外部の支援を受けた場合、支援者名・報酬額の申告が必要な制度があります。未申告は虚偽申請として不採択・交付決定取消の対象です。
・賃上げ要件の未達は返還につながるうえ、未達の報告から18か月間、中小企業庁所管の他の補助金で大幅に減点されます。
・補助金の申請書類の作成を業として行えるのは行政書士ですが、制度によって士業の役割は異なります(雇用関係の助成金は社会保険労務士の業務です)。
本記事の内容
・ 不正受給とは何か、どうなるのか
・ 不正受給の典型例4つ
・ 悪意がなくても取り消される5つのケース
・ 「代行します」という誘いに注意
・ 誰に依頼できるのか(士業の役割)
・ 相談・通報の窓口
・ よくある質問 ・ まとめ
1. 不正受給とは何か、どうなるのか
補助金の不正受給とは、偽りその他不正の手段により補助金の交付を受けることを指します。要件を満たしていないのに満たしているように見せかける、実態のない事業で申請する、経費を水増しする、といった行為が該当します。
不正が認定された場合の措置
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| 交付決定の取消 | 交付決定が取り消され、支払済みの補助金は返還対象になります |
| 加算金 | 返還額に対して、受領日から納付日までの期間に応じた加算金が課されます |
| 事業者名の公表 | 事務局のサイト等で事業者名・不正の内容が公表されることがあります |
| 他の補助金への影響 | 一定期間、国や地方公共団体の補助金に申請できなくなります |
| 刑事責任 | 悪質な場合は詐欺罪等で立件されます。実際に逮捕・起訴された事例があります |
2. 不正受給の典型例4つ
過去に問題となった不正受給には、いくつかの決まった型があります。手口を知っておくことは、誘われたときに気づくために必要です。
01証拠書類の改ざん
確定申告書、決算書、売上台帳といった提出書類の数字を書き換える行為です。売上の計上時期をずらす、実際にはない売上を計上する、といった形をとります。
添付書類は税務署の受付印や受信通知で照合されます。また、補助金の審査は単年度で完結せず、過年度の申告内容と突き合わされます。整合しない数字はいずれ表面化します。
02売上の過少申告・水増し
要件を満たすために、対象期間の売上を意図的に少なく(または多く)見せる行為です。
近年の補助金は付加価値額や1人当たり給与支給総額の伸び率を要件にしており、これらは決算書から機械的に算出されます。申請時に有利な数字を作ると、3〜5年後の目標達成の判定でも同じ数字が使われるため、後年の自分を縛ることになります。
03事業実態の偽装
事業を営んでいないのに、営んでいるように見せかけて申請する行為です。過去には、学生や主婦が「個人事業主」を装って給付金を申請し、摘発された事例が多数ありました。
「名前を貸すだけ」「あとはこちらでやる」という誘いに乗ると、受給者本人が返還義務を負い、刑事責任を問われます。誘った側だけが処罰されるわけではありません。
04支給要件と無関係な理由による申請
たとえば売上減少を要件とする制度で、実際の減少要因が季節変動や自己都合の休業だった場合です。制度が想定する事由に該当しないため、要件を満たしません。
現行の補助金でも、その事業が制度の趣旨に合致しているかは審査の中心です。「経費が対象になりそうだから」という理由だけで制度を選ぶと、この類型に近づきます。
「これは大丈夫か」と迷ったら、先に確認してください
要件を満たすかどうかの判断は、申請前に済ませておくべきものです。採択された後に要件不備が判明すると、取消・返還になります。
京都市中京区の行政書士が対応します。LINE・お電話・オンライン(Zoom)でご相談いただけます(全国対応・初回40分無料)。
3. 悪意がなくても取り消される5つのケース
実務で相談を受けるのは、不正よりも「そんなつもりはなかったのに処分された」という事案です。補助金は、悪意の有無にかかわらず要件で判定されます。
01要件を満たしていないまま申請していた
小規模事業者持続化補助金 第18回では、当初8,330件が採択と発表された後、申請要件を満たしていないことが判明した101件が採択対象から除外され、採択件数が8,229件に修正されました(2026年3月26日公表)。
採択された後にも要件審査は行われます。対象者要件、過去の補助金の報告状況、GビズIDの登録情報など、基本的な部分は申請前に自社で確認しておく必要があります。
02交付決定前に発注してしまった
最も多い失敗です。採択通知は交付決定ではありません。採択後に交付申請を行い、事務局の審査を経て交付決定が出て、そこで初めて発注できます。
交付決定日より前に発注・契約・支払いをした経費は、補助対象外になります。納期の都合で先に発注してしまい、その経費が丸ごと外れるという事故が起きています。
03外部の支援者を申告していなかった
制度によっては、第三者から支援を受けた場合に支援者名・支援内容・報酬額・契約期間の申告が必須とされています。
小規模事業者持続化補助金では、様式2の「第三者からのアドバイスの有無」に記載しないと虚偽の報告として不採択・交付決定取消になります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金でも、電子申請での申告が必要で、未記載は不採択・取消の対象です。
正しく申告できることが、適正な支援者を選ぶ判断材料にもなります。「うちの名前は出さなくていい」と言う業者には注意してください。
04賃上げ目標に届かなかった
近年の補助金は、採択後3〜5年の賃上げと付加価値額の達成を義務づけています。未達の場合は未達成率に応じた返還を求められます。
さらに、賃上げ加点を使って採択されたのに要件未達だった場合、未達の報告から18か月間、中小企業庁所管の他の補助金で大幅に減点されます。1回の未達が、その後の申請機会を狭めます。
計画段階の「見栄えのよい数字」は、後の自分を縛ります。達成できる範囲で組んでください。
05報告や期限を守れなかった
交付申請は採択発表日から原則2か月以内、実績報告は事業完了後の定められた期限内、事業化状況報告は最長5年間続きます。期限を過ぎると採択が取り消される制度があります。
また、実績報告の不備が重なると補助金額の確定が遅れます。持続化補助金の事務局は2026年8月5日、不備修正が複数回発生した場合に確定まで3か月程度かかることがあると注意喚起しています。補助金は精算払いのため、確定の遅れはそのまま資金繰りに響きます。
4. 「代行します」という誘いに注意
補助金の公募時期には、支援を持ちかける勧誘が増えます。すべてが問題というわけではありませんが、次のような特徴がある場合は距離を置いてください。
警戒すべき勧誘の特徴
・「必ず採択される」「採択率100%」と断言する:審査がある以上、保証はできません
・報酬がサービス内容と釣り合わない:成功報酬20%超など、高額な料金を提示してくる
・「支援者として名前を出す必要はない」と言う:申告義務がある制度では虚偽申請になります
・書類を「こちらで整えます」と言い、内容を見せない:事業計画は事業者自身が作成するものです
・数字を「合わせておく」と言う:改ざんの提案です
・連絡先が携帯番号のみ、所在地が不明:問題が起きたときに追跡できません
5. 誰に依頼できるのか(士業の役割)
「補助金の申請代行は行政書士だけ」という説明を見かけますが、正確ではありません。制度によって担当する士業が異なります。
| 分野 | 担当 | 内容 |
|---|---|---|
| 補助金の申請書類 | 行政書士 | 官公署に提出する書類の作成を業として行えます。ただし後述のとおり、事業計画の作成主体は事業者です |
| 雇用・労働関係の助成金 | 社会保険労務士 | 雇用調整助成金、キャリアアップ助成金など、労働保険・雇用保険に基づく助成金は社会保険労務士の業務です |
| 税務書類・税務相談 | 税理士 | 決算書の作成、圧縮記帳の判断、補助金収入の税務処理など |
| 経営診断・計画策定の助言 | 中小企業診断士 等 | 資格に基づく独占業務ではありませんが、計画策定の支援を行う専門家です |
| 認定経営革新等支援機関 | 金融機関・士業等 | 制度によっては確認書の発行者として関与します |
したがって、専門家の役割は「代わりに書くこと」ではなく「作成を支援し、要件との適合を確認すること」です(令和7年改正後の取扱い)。
健全な支援者の見分け方
- 申告を前提に話す:支援者として申告することを当然のものとして扱う
- 不採択の可能性を説明する:採択を保証しない
- 「申請しないほうがよい」と言うことがある:要件を満たさない場合や、費用対効果が合わない場合にそう伝えられる
- 採択後の義務を先に説明する:賃上げ、報告、返還リスクを申請前に伝える
- 報酬の根拠を示せる:作業範囲と料金の対応が説明できる
6. 相談・通報の窓口
おかしいと感じたら、抱え込まずに確認してください。制度ごとに事務局の相談窓口があります。
・各補助金の事務局:公式サイトに問い合わせ窓口があります。要件の解釈は事務局が最終的な判断者です
・警察相談専用電話:#9110(詐欺被害・勧誘トラブル)
・消費者ホットライン:188(局番なし)
・京都市 消費生活総合センター:075-256-1110
・中小企業庁 補助金等不正受給情報提供窓口:不正受給に関する情報提供を受け付けています
7. よくある質問
Q. 不正受給が発覚すると、返せば済みますか?
Q. 「名前を貸すだけ」と言われました。問題ありますか?
Q. 悪意はなかったのに取り消されることはありますか?
Q. 支援を受けたことは申告しないといけませんか?
Q. 支援者への報酬は補助金で払えますか?
Q. 補助金の申請代行は行政書士だけができるのですか?
また、補助金では事業計画書を事業者自身が作成することが求められており、行政書士は作成支援・確認の立場で関与します(行政書士法第一条の二・第19条第1項、令和7年6月13日 総行行第283号)。「すべて代わりに書きます」という説明は、制度の建前とも実務とも合いません。
Q. 賃上げ要件が達成できなかったらどうなりますか?
Q. 申請してしまってから不安になりました。どうすればよいですか?
8. まとめ
・不正受給は返還だけでは済まない。加算金・事業者名の公表・他制度への影響・刑事責任
・典型は4つ。書類の改ざん/売上の過少申告・水増し/事業実態の偽装/要件と無関係な理由
・「名前を貸すだけ」でも受給者本人が責任を負う
・実務で多いのは悪意なき取消。要件不備・交付決定前の発注・支援者の未申告・賃上げ未達・期限徒過
・持続化補助金 第18回では、採択後に101件が要件不備で除外された
・支援報酬は補助金でまかなえない(提出書類の作成費用は補助対象外)
・事業計画は事業者自身が作成するもの。専門家は作成支援・確認の立場
・雇用関係の助成金は社会保険労務士の業務。士業の役割は制度で異なる
本記事は、各補助金の公募要領および事務局の公表情報に基づいて作成しています(最終確認日:2026年8月19日)。制度ごとに要件・手続は異なりますので、具体的な判断は各制度の最新の公募要領と事務局の案内をご確認ください。
申請前に要件を確認したい方は、2026年度 補助金総合ガイドで現在の公募状況をご確認ください。支援を依頼する際の流れと料金は補助金申請代行サービスで明示しています。
申請前に、要件を一緒に確認しませんか
当事務所は、要件を満たさない場合はその旨をお伝えします。採択を保証することはしません。
支援者としての申告にも当然に応じます。補助金サポート実績105社超。初回相談40分無料・全国オンライン対応。
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