2026年10月8日更新/京都観光総合調査2025
オーバーツーリズムの現実 京都と観光地
2025年の京都の観光客数は過去最高でした。その裏で、宿泊税の徴収、駐車場の予約制、入山料といった規制の実務が宿泊・飲食事業者の仕事に加わっています。京都市の統計と各自治体の公表資料で、何が起きているかを整理しました。
6,279万人
2025年 観光客数
849万人
日本人宿泊客(2019年は858万人)
50.9%
混雑回避の行動をとった日本人
出典:京都市産業観光局「令和7年 京都観光総合調査」(2026年6月12日公表)
この記事の要点
- 2025年の京都市の観光客数・観光消費額は過去最高。日本人宿泊客は849万人で、2019年の858万人を下回った。
- 2026年3〜8月、主要ホテルの中国からの宿泊者は前年比5〜6割減。同じ期間に日本人宿泊者は各月9.6〜15.6%増え、客室稼働率は前年比+2.5〜−4.8ポイントの範囲で推移した。
- 宿泊税の最高額は2026年3月から1,000円→10,000円。徴収・申告・納入の義務は宿泊事業者にある。
- 観光庁の面的受入環境整備促進事業は、一般型なら民間事業者も申請できる。京都市内の旅館・ホテル向けには、京都市の補助金が11月13日まで募集中。
1. 京都の数字:客数は過去最高、日本人宿泊客は減少
京都市は2026年6月12日に「令和7年 京都観光総合調査」を公表しました。主な数値は次のとおりです。
| 指標 | 2025年 | 2024年 | 2019年 |
|---|---|---|---|
| 観光客数 | 6,279万人 | 5,606万人 | 5,352万人 |
| うち日本人 | 5,011万人 | 4,518万人 | 4,466万人 |
| うち外国人 | 1,268万人 | 1,088万人 | 886万人 |
| 宿泊客数 | 1,659万人 | 1,630万人 | 1,317万人 |
| 観光消費額 | 2兆474億円 | 1兆8,839億円 | 1兆2,348億円 |
| 経済波及効果 | 2兆2,193億円 | 2兆718億円 | 1兆3,548億円 |
| 修学旅行生数 | 67万人 | 75万人 | 70万人 |
出典:京都市産業観光局「令和7年 京都観光総合調査結果【概要】」
観光客数、宿泊客数、観光消費額、経済波及効果はいずれも過去最高です。日本人観光客数は、過去最高だった平成27年の5,202万人に次ぐ水準でした。
この調査を引用するときは系列に注意してください。京都市は2025年調査から推計手法を変え、2019年分まで数値を遡及修正しています。過去の報告書に載っている宿泊客数や観光消費額は、現在の数値と一致しません。この記事の数値はすべて遡及修正後の新系列です。
日本人宿泊客は2年連続で減った
| 年 | 日本人宿泊客 | 外国人宿泊客 |
|---|---|---|
| 2019年 | 858万人 | 459万人 |
| 2023年 | 990万人 | 485万人 |
| 2024年 | 921万人 | 709万人 |
| 2025年 | 849万人 | 809万人 |
出典:同上(遡及修正後の新系列、実人数)
日本人宿泊客は2023年の990万人から2年続けて減り、2025年は849万人で2019年の858万人を下回りました。外国人宿泊客は2019年の459万人から809万人へ1.76倍です。2025年、京都市の宿泊客は日本人と外国人がほぼ同数になりました。
中国からの宿泊者が減っても、稼働率は大きく下がっていない
2026年に入り、「中国人観光客が減って京都は空いた」という話が広まりました。京都市観光協会が毎月公表している主要ホテルのデータ月報で、前年同月比を確認します。
| 2026年 | 中国 | 外国人計 | 日本人 | 客室稼働率(前年差) |
|---|---|---|---|---|
| 3月 | −64.9% | −0.4% | +11.1% | 81.6%(+2.5pt) |
| 4月 | −64.3% | −11.5% | +11.1% | 85.1%(−4.8pt) |
| 5月 | −64.9% | −3.2% | +9.6% | 87.0%(−0.1pt) |
| 6月 | −56.5% | −5.2% | +9.8% | 78.9%(−0.9pt) |
| 7月 | −56.4% | −7.4% | +15.6% | 75.9%(+0.7pt) |
| 8月 | −60.4% | −12.4% | +15.6% | 74.9%(−1.0pt) |
出典:京都市観光協会「データ月報」2026年3月〜8月版(宿泊者数は延べ人泊の前年同月比)。調査対象は市内の主要ホテル(6月時点で118施設)で、市内の全宿泊施設を対象とする調査ではありません。
中国からの宿泊者は6か月とも5〜6割減りました。外国人全体の減少は0.4〜12.4%にとどまり、日本人宿泊者は毎月9.6〜15.6%増えています。客室稼働率の前年差は、+2.5ポイントから−4.8ポイントの範囲でした。
中国からの需要減の大部分は、他の国・地域と日本人の需要で埋まっています。宿泊統計からは「中国人が減ってオーバーツーリズムが解消した」とは言えません。
この表で測れる範囲にも限りがあります。客室稼働率は、清水寺周辺の歩行者の密度や市バスの混み具合を測る指標ではありません。市街地の混雑が緩和したかどうかは、人流データや公共交通のデータで確認する必要があります。この表から言えるのは、宿泊需要が落ちていないことです。
この章のポイント
2025年の観光客数・消費額は過去最高で、日本人宿泊客は849万人と2019年を下回りました。2026年3〜8月、中国からの宿泊者は5〜6割減りましたが、日本人宿泊者は毎月9.6〜15.6%増え、客室稼働率の前年差は±5ポイント以内です。
目次に戻る2. 混雑が客の行動と満足度を変えている
観光客の半数が混雑回避の行動をとった
2025年の京都観光総合調査には、「混雑を避けるために意識してとった行動の有無」という設問が新しく加わりました。「ある」と答えたのは日本人50.9%、外国人54.0%です。
行動を変えた客は、時間帯・訪問先・滞在時間をずらします。ピーク時間帯の売上は前後の時間か別のエリアへ移ります。立地の集客力に頼ってきた飲食店ほど、この移動の影響を受けます。
日本人の再訪意向は2年で12.9ポイント下がった
| 指標(日本人) | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 再訪意向「大変そう思う」 | 66.4% | 65.3% | 53.5% |
| 推奨意向「大変そう思う」 | 49.8% | 49.1% | 39.2% |
| 残念なことがあった割合 | 43.0% | 48.4% | 47.2% |
出典:京都市「令和7年 京都観光総合調査結果【概要】」
日本人の再訪意向の最上位区分は2年で12.9ポイント、推奨意向は10.6ポイント下がりました。「残念なことがあった」は日本人47.2%に対し、外国人は21.0%です。
日本人宿泊客の減少(2023年990万人→2025年849万人)と同じ時期に、日本人の再訪意向・推奨意向も下がっています。両者の因果関係はこの調査だけでは確かめられませんが、日本人客の満足度の低下を、宿泊客数の減少と並ぶ注意信号として扱う理由にはなります。
繁閑差1.3倍と、日本人・外国人の滞在の違い
2025年の月別観光客数の繁閑差は1.3倍で、最多は11月、最少は2月でした。市全体を1年で均した数値なので、個々の店舗や宿の繁閑差はこれより大きくなりえます。人手不足のなかで繁忙期に合わせて人を雇うと閑散期の人件費が重くなり、閑散期に合わせると繁忙期に客を取りこぼします。
滞在の形も日本人と外国人で違います。市内で3泊以上する割合は外国人68.3%、日本人16.4%。外国人の78.0%は京都が初めてで、日本人の58.0%は10回以上訪れています。長く滞在する初訪の外国人と、短く滞在する常連の日本人では、求める案内やサービスが違います。一つの店舗オペレーションで両方に対応するには、人手か仕組みのどちらかを増やす必要があります。
この章のポイント
観光客の半数以上が混雑を避ける行動をとっており、需要は時間帯と場所を移しています。日本人の再訪意向は2年で12.9ポイント下がりました。宿泊客数と並んで、日本人客の満足度の推移も確認しておく必要があります。
目次に戻る3. 事業者に加わった4つの規制実務
2025年から2026年に観光地の自治体が始めた施策を並べると、いずれも事業者に新しい事務か費用を発生させています。4つに分けて整理します。
① 徴税事務:宿泊税の特別徴収
京都市の宿泊税は2026年3月1日に改定されました。
| 1人1泊の宿泊料金 | 改定前 | 2026年3月1日以後 |
|---|---|---|
| 6,000円未満 | 200円 | 200円 |
| 6,000円以上2万円未満 | 200円 | 400円 |
| 2万円以上5万円未満 | 500円 | 1,000円 |
| 5万円以上10万円未満 | 1,000円 | 4,000円 |
| 10万円以上 | 1,000円 | 10,000円 |
出典:京都市「宿泊税について(概要)」。2025年10月3日に総務大臣が同意。京都市は見直し後の税収を約126億円と見込んでいます。
最高額は1,000円から10,000円になりました。税を負担するのは宿泊者ですが、徴収し、申告し、納入する義務は宿泊事業者が負います。二次情報には「2026年4月から最大3,000円」と書いたものがありますが、施行日・金額とも京都市の公表内容と違います。
② 予約管理:事前予約制への対応
岐阜県白川村は、村営せせらぎ公園駐車場内のバス駐車場を、2026年12月1日利用分からツアーバス(大型・中型・マイクロ)の完全事前予約制にします。予約受付は2026年6月1日に始まり、当日予約はできません。
京都市の清水坂観光駐車場は、2026年10月7日から12月10日まで観光バスを完全予約制(2・3時間制、事前決済)にし、自家用車は期間中終日駐車できません。市は理由に五条坂の入庫待ち渋滞の緩和を挙げています。
富士山では、山梨県側の吉田ルートで1人4,000円の通行料、14時から翌3時までのゲート閉鎖(山小屋宿泊者を除く)、1日4,000人の上限が課されています。静岡県側の3ルートも、事前登録と入山証の提示、1人4,000円の入山料が必要です。2026年の規制期間は9月10日に終わり、静岡県は来年度の内容を未定としています。
③ 動線・交通:移動そのものの規制
山形県尾花沢市は銀山温泉で、マイカー規制(パークアンドライド)と観光客の総量調整・分散化の実証実験を令和6・7年度に行い、2026年4月に一定の成果を得たと公表しました。
京都市交通局の観光特急バスは、2024年6月1日に運行を始めました。運賃は大人500円・小児250円で、市バスの均一区間(大人230円)と別建てです。停留所を主要観光地に絞り、観光客の移動を一般の路線から分けています。
神奈川県鎌倉市は2026年5月3日から5日の12時〜16時、江ノ電鎌倉駅西口改札で「沿線住民等優先入場社会実験」を行いました。市発行の証明書を示した沿線住民などは、駅外の待機列に並ばずに構内へ入れる仕組みです。今回は入場規制が発生せず、優先入場は行われませんでした。鎌倉市の2025年の観光客数は約1,606万人(前年比約100.74%)です。
④ 原価上昇:公共料金の改定
白川村は2025年10月1日、村営駐車場の料金(運用額)を改定しました。
| 車種 | 改定前 | 改定後 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 大型・マイクロバス | 3,000円 | 10,000円 | 3.3倍 |
| 普通・軽自動車 | 1,000円 | 2,000円 | 2.0倍 |
| 二輪車・原付 | 200円 | 500円 | 2.5倍 |
出典:白川村役場観光振興課「村営駐車場の料金改定について」(観光庁事例集掲載)。村は改定理由に、オーバーツーリズム対策(混雑の分散)、物価・人件費高騰による維持管理費と除雪経費の増加、大規模修繕の財源確保を挙げています。
バス1台あたり7,000円の増加で、ツアーの原価にそのまま乗ります。自治体の資料が改定理由の一つに「オーバーツーリズム対策」を明記している点は、今後ほかの観光地で料金改定が議論されるときの先例になります。
4類型のまとめ
| 類型 | 例 | 事業者に発生する実務 | 費用の性格 |
|---|---|---|---|
| ① 徴税事務 | 京都市宿泊税 | 区分判定・徴収・申告・納入・返金対応 | 毎月の事務 |
| ② 予約管理 | 白川郷・清水坂・富士山 | 枠の取得・行程調整・キャンセル処理 | 人件費と機会損失 |
| ③ 動線・交通 | 銀山温泉・鎌倉・観光特急バス | 送迎ルートの変更・待ち行列の管理・案内 | 人件費と顧客対応 |
| ④ 原価上昇 | 白川村の駐車場料金 | 価格改定・原価の再計算 | 直接原価 |
この章のポイント
宿泊税の特別徴収、駐車場の完全予約制、入山料と人数上限、マイカー規制、駐車場料金の値上げ。どれも観光客に向けた規制で、その運用は宿泊・飲食・旅行事業者の事務と原価になっています。
目次に戻る4. 宿泊税を集める側の実務
徴収し忘れた分も納税義務は残る
宿泊税は特別徴収で、宿泊者から預かった税を事業者が納めます。徴収し忘れた分も納税義務は事業者に残り、チェックアウト後に宿泊者から回収するのは実務上ほぼ無理です。団体客の人数変更、途中退室、無料招待、長期滞在の途中精算で判定を誤ると、その分が事業者の負担になります。
判定は部屋単位ではなく1人1泊
改定で区分は3つから5つになり、6,000円・2万円・5万円・10万円の4つが境目になりました。この前後の価格帯を扱う施設では、プラン変更や割引のたびに税額が変わります。
| 宿泊料金に含まれるもの | 含まれないもの |
|---|---|
| 清掃代、寝具使用料、入浴代、寝衣代、サービス料・奉仕料 等 | 食事代、消費税 等 |
出典:京都市「よくある質問:宿泊料金」(2026年9月10日更新)
区分は1室の料金を人数で割った1人1泊の金額で判定します。20,000円の部屋に1人で泊まれば1人1泊20,000円で税額は1,000円、2人で泊まれば1人10,000円で税額は各400円です。同じ売上でも、人数構成で納める税額が変わります。
割引があるときの扱い
京都市のFAQは、割引の種類で宿泊料金の扱いを分けています。
- 宿泊施設の経営者自身が行う割引:割引後の料金で判定
- 予約サイトのポイント等による割引:割引前の料金で判定
- 全国旅行支援のように割引相当額が補助金等で施設に交付される場合:宿泊者の支払額と補助金等を合算した割引前の金額で判定
宿泊者が実際に払った金額だけで判定すると、後の2つで税額が不足します。予約サイト経由の予約やキャンペーン参加が多い施設ほど、この区別を予約管理システムの設定とフロントの手順に組み込んでおく必要があります。予約サイトの税込・税別表示の違いも、宿泊者とのトラブルの原因になります。
宿泊税を課す自治体は増えている
総務省の「法定外税の実施状況(令和7年度)」(令和8年1月現在)では、宿泊税を課している道府県は東京都・大阪府・福岡県・宮城県・広島県・北海道・長野県の7団体です。2026年9月30日には、白浜町・大分県・鹿児島市・指宿市の宿泊税新設に総務大臣が同意しました。出店予定地を含め、課税方式(定額か定率か)と税率を事業計画に入れておく必要があります。
出典:総務省「法定外税の実施状況(令和7年度)」/総務省 報道資料(2026年9月30日)
この章のポイント
宿泊税の徴収漏れは事業者の自己負担になります。区分は1人1泊で判定し、予約サイトのポイント割引と補助金による割引は割引前の金額で判定します。この3点を予約管理システムとフロントの手順に入れておくことが事故防止の基本です。
目次に戻る5. 課金と客数:ベネチアと京都のデータ
「入場料を取れば混雑が減る」という主張の根拠としてよく引かれるのが、イタリアのベネチア市です。市の公表資料を確認します。
アクセス・フィーの仕組み
ベネチア市は2024年から日帰り客を対象にアクセス・フィー(入域料)を課しています。対象日は2024年が29日、2025年が54日、2026年は4月3日〜7月26日のうち60日で、時間は8時30分〜16時です。2026年の料金は入場日の4日前までに払えば5ユーロ、それ以降は10ユーロです。
2026年の暫定結果
| 項目 | 2024年 | 2025年 | 2026年(暫定) |
|---|---|---|---|
| 対象日数 | 29日 | 54日 | 60日 |
| 有料券が2万件以上の日 | 4日(13.8%) | 3日(5.6%) | 1日(1.7%) |
出典:ベネチア市「Contributo di accesso: i dati provvisori del 2026」(2026年7月29日)
2026年の有料券は679,553件、徴収額は5,215,035ユーロでした。5ユーロ券が46.5%、10ユーロ券が53.5%です。1日平均の有料券は11,326件で、2024年より32.3%減りました。
ただし市は、2025年との収入比較について、対象日の数と配置、祝日の位置、天候、暫定値であることを理由に「単純な算術では比較できない」と注記しています。2025年の発表でも、2024年との比較はごく部分的なものだとしています。高流入日が減ったことを、料金の効果だけで説明する資料はありません。
京都では宿泊税を上げた月に稼働率が上がった
宿泊税を改定した2026年3月、主要ホテルの客室稼働率は81.6%で、前年より2.5ポイント上がりました。4月は4.8ポイント下がり、5〜8月の前年差は+0.7〜−1.0ポイントです。税率の引上げによる需要減は、このデータからは確認できません。そもそも京都市の宿泊税は観光振興と受入環境整備の財源で、客数を減らすための税として設計されてはいません。
国の課金も増えた
国際観光旅客税は、2026年7月1日以後の出国から1回1,000円が3,000円になりました。日本から出国する人は国籍を問わず対象です。7月1日より前に結んだ運送契約で、出国日もその前に決まっていたものは1,000円のままです(国税庁)。観光庁は税収の使途として、オーバーツーリズム対策の強化と地方誘客を挙げています。
京都市の宿泊税の最高額10倍、白川村のバス駐車料金3.3倍、富士山の4,000円、国際観光旅客税3倍。料金で観光の費用を賄う制度が、自治体と国の両方で増えています。ベネチアと京都のデータを見る限り、料金が上がっても客数が大きく減るとは限りません。設備の計画は、混雑と規制の実務が続く前提で立てるのが妥当です。
この章のポイント
ベネチアの高流入日は減りましたが、市自身は単純比較できないと注記しています。京都では宿泊税を上げた3月に稼働率が上がりました。課金は財源を集めていますが、客数を減らす効果は確認されていません。
目次に戻る6. 規制対応の設備投資と使える制度
宿泊業の場合
優先度が高いのは、税額判定と本人確認を含むフロント業務の削減です。
- 宿泊管理システム(PMS)とサイトコントローラーの更新。宿泊税の区分判定を自動化し、予約サイトでの表示をそろえる
- セルフチェックイン端末・スマートロック。深夜・早朝の人員配置を減らす
- 多言語対応。宿泊客の約半数が外国人の市場で、案内の翻訳を仕組みにする
- 清掃・リネン管理の可視化。月別の必要人員を数値で組む
- 駐車場予約制や交通規制の情報を、予約時の案内に組み込む
飲食業の場合
軸になるのは、ピーク時間帯の平準化と、注文・会計の工数削減です。
- 券売機・セルフオーダー・モバイルオーダー。ピーク時のレジ待ちを減らす
- 多言語メニュー。初訪の外国人が78.0%の市場では、説明の時間がそのまま人件費になる
- 予約・順番待ち管理システム。店先の行列は近隣とのトラブルの原因にもなる
- キャッシュレス・多通貨決済
- 仕込みの省人化。真空調理・急速冷却等で繁閑差を吸収する
事業者が単独で申請できる制度(2026年10月8日時点)
| 制度 | 想定される導入 | 状況 |
|---|---|---|
| 京都市 宿泊施設の質の向上(受入環境充実)支援事業補助金 | 地場産品を使った内装、防災・バリアフリー設備(京都市内の旅館・ホテル営業のみ) | 三次募集中。10月30日締切の期間と11月13日締切の期間あり |
| 中小企業省力化投資補助金 | セルフチェックイン、券売機、配膳ロボット | 一般型 第8回は10月16日17:00締切。カタログ注文型は随時 |
| デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金) | PMS、予約管理、翻訳ツール | 次の締切は10月30日17:00 |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 厨房設備、真空調理設備、新業態の出店 | 第1回は10月30日18:00締切 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 券売機、多言語メニュー、店舗改修 | 第20回は11月5日受付開始・12月15日締切(予定) |
補助率・上限額・要件は制度・枠ごとに異なります。申請前に各事務局の最新の公募要領で確認してください。
観光庁の面的受入環境整備促進事業
第5次「観光立国推進基本計画」(2026年3月27日閣議決定、計画期間2026〜2030年度)は、「インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立」を掲げ、パークアンドライド、交通規制、入域管理や予約制の導入、混雑の見える化を進めるとしています。公的施設等の料金設定については、ガイドラインの策定を検討するとしています。
これに対応する観光庁の補助事業が、令和8年度に始まった「オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業」です。2つの類型があり、地域一体型(上限2億円・2/3以内)は地方公共団体と登録DMOしか申請できません。一般型(上限5,000万円・1/2以内)は民間事業者も申請でき、その場合は関係する地方公共団体の同意書が必要です。京都府内では令和8年度の一次・二次で一般型17件が採択され、うち14件はバス・鉄道会社、IT企業、寺院、物流会社、DMOなど地方公共団体以外の申請でした。令和8年度の公募は終了しています。
制度の詳細は別記事にまとめています
この章のポイント
宿泊業はフロント業務、飲食業はピーク時間帯の注文・会計が投資の軸です。10月中に締切を迎える制度が3つあり、京都市内の旅館・ホテルは市の補助金も使えます。観光庁の面的事業は一般型なら民間も申請できますが、令和8年度の公募は終わっています。
目次に戻る7. 補助金の申請理由の書き方
ここからは、補助金申請の支援を業務にしている立場からの見解です。
一般論の課題設定では、投資の必要性が伝わらない
観光関連の申請書で多い失敗は、「インバウンドが増加し、対応が求められている」「オーバーツーリズムが社会問題となっている」といった一般論から書き始めることです。この書き方では、自社がいまその設備に投資する理由が読み手に伝わりません。自社の数字と公的統計をつないで書きます。
| 一般論の書き方 | 自社の数字につないだ書き方 |
|---|---|
| インバウンドが増加している | 当社の外国人宿泊比率は◯年◯%から◯年◯%へ上がり、1件あたりのチェックイン所要時間が◯分から◯分に延びた |
| 混雑が問題となっている | 京都市の調査では日本人観光客の50.9%が混雑回避の行動をとっており、当店のピーク時間帯の客数は◯年比◯%減、前後の時間帯は◯%増えている |
| 人手不足が深刻である | 繁忙月と閑散月の必要人員の差は◯名で、繁忙月に合わせて採用すると年間◯万円の人件費が余る |
| 宿泊税が引き上げられた | 税区分が3つから5つになり、月◯件の判定作業と◯時間の事務が新たに発生している |
公的統計を引くときの3つの確認
- 原典に当たる。まとめ記事の数字は使いません。今回の確認でも、京都市の宿泊税の施行日と金額を誤って書いた記事が複数見つかりました。事業計画書に誤った制度情報があれば、計画全体の信頼性が下がります。
- 系列をそろえる。京都観光総合調査のように推計手法が変わり遡及修正された統計では、新旧の数値を混ぜると数字どうしが矛盾します。
- 定義を確かめる。京都観光総合調査の「観光客」には、ビジネス、買物、イベント、観劇、スポーツ、知人訪問などで市外から来た人も含まれます。そのまま「観光需要」と書くと、審査で根拠を問われます。
申請前に用意する数値5点
- 直近3期の月別売上と客数(繁閑差を示すため)
- ピーク時間帯と閑散時間帯の客数の推移(混雑回避の影響を測るため)
- 外国人比率の推移(対応工数が増えた根拠)
- 1件あたりの処理時間(チェックイン、注文、会計のいずれか)
- 繁忙期と閑散期の必要人員の差と、それに伴う人件費の過不足額
この5点があれば、公的統計につないだ課題設定が書けます。制度が変わっても、同じ数値をそのまま使えます。
まとめと次にやること
- 2025年の京都市の観光客数・観光消費額は過去最高。日本人宿泊客は849万人で2019年を下回った
- 2026年3〜8月、中国からの宿泊者は5〜6割減ったが、日本人宿泊者は毎月9.6〜15.6%増え、客室稼働率の前年差は±5ポイント以内
- 観光客の半数以上が混雑回避の行動をとり、日本人の再訪意向は2年で12.9ポイント低下
- 宿泊税・予約制・入山料・駐車料金の改定で、徴税・予約・動線・原価の実務が事業者に加わった
- ベネチアと京都のデータでは、課金で客数が減る効果は確認されていない
次にやること
- 宿泊施設:予約管理システムの宿泊税設定が「1人1泊判定」「予約サイトのポイント割引は割引前」になっているか確認する
- 京都市内の旅館・ホテル:京都市の宿泊施設向け補助金の要件4つを確認し、10月30日締切の期間に申請するか決める
- 宿泊・飲食とも:7章の数値5点を、直近3期分そろえる
よくあるご質問
宿泊税を徴収し忘れた場合、どうなりますか?
宿泊税は特別徴収で、宿泊事業者が徴収・申告・納入の義務を負います。徴収し忘れても納税義務は事業者に残るため、実務上は自己負担での納付になります。予約管理システムでの区分判定の自動化と、フロント手順の統一が防止策です。
中国人観光客が減ったので、当面は様子見でよいのではないですか?
京都市観光協会のデータ月報では、2026年3〜8月に中国からの宿泊者は5〜6割減りましたが、日本人宿泊者は毎月9.6〜15.6%増え、客室稼働率の前年差は+2.5〜−4.8ポイントでした。特定の国の減少が全体の需要減につながっていないため、様子見の根拠としては弱いと考えます。
同じ部屋に複数人で泊まる場合、宿泊税はどう計算しますか?
京都市の宿泊税は1人1泊あたりの宿泊料金で区分を判定します。20,000円の部屋に2人で泊まる場合は1人10,000円として判定し、税額は1人400円です。宿泊料金には清掃代・寝具使用料・サービス料が含まれ、食事代と消費税は含まれません。
予約サイトのポイントで割引した場合、宿泊税はどの金額で判定しますか?
京都市のFAQでは、予約サイトのポイント等による割引は割引前の料金で判定します。宿泊施設の経営者自身が行う割引は割引後の料金です。全国旅行支援のように補助金で割引相当額が交付される場合は、宿泊者の支払額と補助金を合算した割引前の金額で判定します。
補助金は設備を買ってから申請できますか?
多くの制度で、交付決定前に発注・契約・支払いをした経費は補助対象外です。京都市の宿泊施設向け補助金も、実施期間は交付決定日以降です。設備の入替えを検討している段階で、公募要領の対象期間を確認してください。
「うちの場合はどの制度か」からご相談ください
セルフチェックインを入れたい、券売機を替えたい、宿泊税の判定を自動化したい。設備が決まっていない段階でも構いません。申請から交付申請、実績報告、事業化状況報告まで支援しています。LINE・電話・オンライン(Zoom)で相談でき、初回40分は無料です。
主な出典(最終確認 2026年10月8日):京都市産業観光局「令和7年 京都観光総合調査」/京都市観光協会「データ月報」2026年3〜8月版/京都市「宿泊税について(概要)」「よくある質問:宿泊料金」/総務省「法定外税の実施状況(令和7年度)」・2026年9月30日報道資料/白川村 公式ページ・観光庁事例集掲載資料/山梨県・静岡県 富士山登山規制ページ/尾花沢市 銀山温泉実証実験ページ/鎌倉市 記者発表・社会実験報告書/京都市交通局 報道発表/ベネチア市 2026年7月29日発表/観光庁「第5次観光立国推進基本計画」(2026年3月27日閣議決定)/国税庁 国際観光旅客税ページ/各補助金の事務局サイト。制度の内容は変更されることがあります。
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