2026年10月9日更新/法務省・日本公証人連合会の公表資料で確認
電子定款とは 印紙代4万円が要らない仕組みと、認証・登記を早く終える条件
電子定款にすると、紙の定款に貼る収入印紙4万円が不要になります。ただし節約できるのは株式会社と合同会社などの持分会社で、一般社団法人では金額は変わりません。法人形態ごとの損得、手数料、48時間・72時間処理の条件、2026年2月からの設立日ルールをまとめました。
4万円
不要になる印紙代(株式会社・持分会社)
1.5万円
認証手数料の最低額(3要件あり)
72時間
認証+設立登記の原則処理時間(5条件あり)
出典:法務省「スタートアップ支援のための定款認証に関する新たな取組について」/公証人手数料令第35条
この記事の要点
- 電子定款は、最初から電子ファイルで作り、電子署名を付けた定款。紙の定款をスキャンしたPDFは電子定款にならない。
- 印紙代4万円が不要になるのは株式会社と持分会社(合同会社・合資会社・合名会社)。一般社団法人・一般財団法人の定款は、紙でも印紙税がかからない。
- 2024年3月1日から、電子定款の認証は全国の公証役場でウェブ会議が原則。認証済みデータはメールでも受け取れる。
- 定款作成支援ツールを使うと原則48時間で認証(2025年3月3日から全国)。条件を満たせば認証と設立登記を合わせて原則72時間。
- 認証手数料は資本金に応じて3〜5万円。3要件を満たす小規模な株式会社は1万5,000円(2024年12月1日から)。
- 2026年2月2日から、土日祝日などの行政機関の休日を会社の設立日にできる。申請は直前の開庁日に行う。
1. 電子定款とは
定款の役割
定款は、会社の目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称と住所といった、会社の基本ルールを定めた書面です。株式会社を設立するときは、発起人が定款を作成します(会社法第26条第1項)。
電子定款の定義
電子定款は、定款を紙ではなく電磁的記録で作成したものです。会社法第26条第2項は、定款を電磁的記録で作成できるとし、その場合は署名・記名押印に代わる措置として法務省令で定める電子署名を付けるよう定めています。
紙の定款をスキャンしたPDFは電子定款になりません。
紙に署名押印した時点で紙の定款が成立し、その原本は印紙税の課税文書です。スキャンしたPDFは写しにすぎず、原本に4万円の収入印紙が必要になります。電子定款として扱われるのは、最初から電子ファイルで作成し、所定の電子署名を付けたものだけです。
根拠:会社法第26条、会社法施行規則第225条
必要な電子署名
定款のPDFに、発起人(株式会社)または社員(合同会社など)が電子署名を付けます。使える電子証明書は、マイナンバーカードの署名用電子証明書や、商業登記に基づく電子証明書など、法務省が認める認証局のものです。行政書士などに作成を依頼した場合は、作成代理人が自分の電子証明書で署名し、発起人からは委任状を受け取ります。
2026年1月13日からは、XML署名を付けたPDFでの嘱託や、委任状などを含む複数ファイルでの送信も受け付けられるようになりました。ファイルの添付方法は同月29日に変更されています。具体的な操作は法務省「登記・供託オンライン申請システム」のお知らせで確認してください。
2. 法的な根拠
公証人の認証
株式会社を設立するときに作成した定款(原始定款)は、公証人の認証を受けなければ効力を生じません(会社法第30条第1項)。認証が必要なのは原始定款だけで、設立後に定款を変更するときは認証は要りません。電子署名を付けた電子定款は、紙の定款と同じ効力を持ちます。
実質的支配者の申告
2018年11月30日から、株式会社などの定款認証では、実質的支配者となるべき者の氏名・住所・生年月日などと、暴力団員等に該当するかどうかを公証人に申告します。マネー・ローンダリング対策のための制度で、申告書の書式は日本公証人連合会のサイトにあります。
根拠:会社法第30条第1項、公証人法施行規則第13条の4
3. 法人形態別の損得
電子定款で何円得をするかは、作る法人の種類で決まります。印紙税がかかる定款は、印紙税法の第6号文書に当たる株式会社・合名会社・合資会社・合同会社・相互会社の設立時の定款だけです。
| 法人形態 | 公証人の認証 | 紙定款の印紙代 | 電子定款での節約 |
|---|---|---|---|
| 株式会社 | 必要 | 4万円 | 4万円 |
| 合同会社 | 不要 | 4万円 | 4万円 |
| 合資会社・合名会社 | 不要 | 4万円 | 4万円 |
| 一般社団法人・一般財団法人 | 必要 | 課税対象外 | なし |
根拠:印紙税法 別表第一 第6号文書。印紙税がかかるのは公証人が保存する定款の原本1通です。
合同会社は認証不要でも印紙は必要
合同会社は公証人の認証が要らないため、定款に費用はかからないと思われがちです。紙で定款を作ると、印紙税4万円は課税されます。設立費用を抑えるために合同会社を選んだのであれば、電子定款にするかどうかで4万円の差がそのまま出ます。
一般社団法人は電子化しても金額が変わらない
一般社団法人・一般財団法人の定款は印紙税の課税文書ではないため、紙で作っても印紙は要りません。認証手数料5万円も紙と電子で同じです。電子化の利点は、公証役場に行かずに済むこととデータの受け渡しが早いことです。
法人形態の比較は法人の種類と選び方で7類型を並べています。合同会社の設立手順は合同会社の設立、法人化するかどうかの判断は会社設立のメリット・デメリットをご覧ください。
4. メリット
印紙代4万円が不要
印紙税は紙の文書にかかる税で、電磁的記録は課税されません。日本公証人連合会も、電子定款には印紙が不要と案内しています。対象は前章のとおり株式会社と持分会社です。
公証役場に行かずに済む
2024年3月1日から、全国の公証役場で、電子定款の認証の面前審査はウェブ会議で行うのが原則になりました(利用者から特段の希望がない場合)。代理人が面前審査を受ける場合もウェブ会議を使えます。認証済みの定款データは、登記・供託オンライン申請システムなどからのダウンロードに加え、メールでも受け取れます。
出典:法務省「スタートアップ支援のための定款認証に関する新たな取組について」(令和7年3月3日更新)
処理が速い
定款作成支援ツールを使えば原則48時間で認証、条件を満たせば認証と設立登記を合わせて原則72時間で完了します。条件は第7章にまとめました。
印刷・製本が要らない
紙の定款は全ページを製本し、発起人全員が契印を押します。電子定款ではこの作業がなく、発起人が遠方にいても書類を郵送で回す必要がありません。
5. デメリットと注意点
自分で作るには機器とソフトが必要
署名用電子証明書が入ったマイナンバーカード、ICカードリーダライタ、PDFに電子署名できるソフト、法務省の申請用総合ソフトを揃えます。1回だけの設立のために環境を整えると、機器代と準備の手間で節約額の多くが消えます。専門家に頼めば、これらの機器は要りません。
認証後は修正できない
認証を受けた定款は修正できず、誤りがあれば認証をやり直して手数料を払い直します。認証の前に、定款案をメールやFAXで公証役場に送り、点検を受けてください。
目的欄の書き方が許認可に影響する
定款の目的欄は、設立後に取る許認可(建設業、産業廃棄物処理業、宅地建物取引業、古物商、旅行業など)の審査で確認されます。事業が目的に書かれていないと申請前に目的変更が必要になり、変更登記の登録免許税3万円がかかります。電子か紙かより先に、目的欄の設計を固めてください。
6. 作成から認証までの手順
- 機器とソフトを用意する。マイナンバーカード、ICカードリーダライタ、署名ソフト、申請用総合ソフト(無償)。専門家に頼む場合は不要です。
- 定款の内容を作る。絶対的記載事項(目的、商号、本店の所在地、出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称と住所)を漏れなく書き、PDFにします。
- 公証役場に定款案を点検してもらう。メールやFAXで送ります。実質的支配者となるべき者の申告書もこの段階で出します。
- PDFに電子署名する。発起人全員、または委任を受けた作成代理人が署名します。
- オンラインで認証を嘱託する。法務省「登記・供託オンライン申請システム」またはデジタル庁「法人設立ワンストップサービス」を使います。システムには利用時間の制限があります。
- ウェブ会議で面前審査を受け、データを受け取る。認証済みデータはダウンロードかメールで受け取ります。公証役場で受け取ることもできます。
7. 48時間処理と72時間処理
48時間処理(定款作成支援ツールの利用が条件)
日本公証人連合会の定款作成支援ツールで作った定款は、原則48時間で認証を終える運用の対象になります。48時間は、必要な資料がすべてメールで公証役場に届いた時点から数え、土日祝日は含みません。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2023年12月26日 | 定款作成支援ツールの公開 |
| 2024年1月10日 | 48時間処理を東京・福岡で試行 |
| 2024年2月1日 | 事業目的の入力欄を5項目から15項目に拡大。書面の委任状も対象に |
| 2024年9月20日 | 埼玉・千葉・神奈川・愛知・大阪に拡大。72時間処理の開始 |
| 2025年3月3日 | 48時間処理を全国で実施 |
出典:法務省「スタートアップ支援のための定款認証に関する新たな取組について」
72時間処理(認証+設立登記)
公証役場と法務局の連携で、定款認証と設立登記を合わせて原則72時間で終える運用です。次の5つをすべて満たす必要があります。
- 48時間処理の対象であること
- 定款認証の後、1週間以内にオンラインで設立登記を申請すること
- 添付書面(定款、発起人の同意書、就任承諾書など)をすべて電磁的記録で作り、申請書と一緒に送信すること
- 登録免許税を電子納付すること
- 補正がないこと
認証から登記申請までの時間は72時間に含まれません。添付書面を法務局に持参または郵送した場合と、補正が入った場合は対象外です。書類に不備がないことが前提の運用です。
8. 費用
定款認証手数料
| 区分 | 手数料 | 備考 |
|---|---|---|
| 株式会社(資本金の額等100万円未満) | 3万円 | 3要件を満たせば1万5,000円 |
| 株式会社(100万円以上300万円未満) | 4万円 | — |
| 株式会社(300万円以上) | 5万円 | — |
| 一般社団法人・一般財団法人 | 5万円 | 一律 |
1万5,000円になる3要件(2024年12月1日から)
資本金の額等が100万円未満の株式会社で、次の3つをすべて満たす場合です。1つでも欠けると3万円です。
- 発起人が全員自然人で、3人以下
- 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨が定款にある
- 取締役会を置く旨が定款にない
根拠:公証人手数料令第35条(令和6年政令第353号で改正、2024年12月1日施行)
そのほかの費用
| 費目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 収入印紙 | 4万円 | 電子定款では不要(株式会社・持分会社) |
| 電子定款の保存 | 300円 | 公証役場での電磁的記録の保存 |
| 電子定款の同一情報の提供 | 1件700円 | 書面で受け取る場合は1枚20円を加算 |
| 紙定款の謄本 | 1枚250円 | 紙で認証を受けた場合 |
| 登録免許税(株式会社) | 資本金の0.7% | 最低15万円。紙・電子で同じ |
| 登録免許税(合同会社) | 資本金の0.7% | 最低6万円。紙・電子で同じ |
| ICカードリーダライタ | 数千円程度 | 自分で作る場合のみ |
根拠:公証人手数料令第40条ほか、登録免許税法別表第一。金額は2026年10月9日に確認しました。手続きの前に公証役場でもご確認ください。
9. 2026年2月からの設立日ルール
2026年2月2日施行の改正商業登記規則(第35条の4)により、行政機関の休日を会社の設立日にできるようになりました。行政機関の休日には、土日、祝日、年末年始(12月29日〜1月3日)が含まれます。
会社の設立日は登記申請の日です。これまでは法務局が閉まっている日を設立日にできませんでした。改正後は、希望する休日の直前の開庁日に登記を申請し、その休日を登記の日として指定します。1月1日や記念日を設立日にしたい場合に使えます。
株式会社のほか、持分会社(組織変更による設立を除く)、一般社団法人・一般財団法人、各種法人にも適用されます。定款認証と設立登記をオンラインで同時に申請する場合は、申請日までに認証が終わっていなければなりません。
申請は直前の開庁日の開庁時間内です。定款認証、出資金の払込み、登記書類の準備をその日から逆算して組んでください。
根拠:商業登記規則第35条の4(令和8年法務省令第2号、2026年2月2日施行)/令和8年1月21日付け法務省民商第9号 民事局長通達
10. 保存方法と設立後の定款変更
定款の備置き
会社は定款を本店と支店に備え置き、株主や債権者から請求があれば閲覧・謄写に応じます(会社法第31条)。電子定款は電磁的記録のまま保存します。会社がある限り使う書類なので、複数の場所にバックアップを取り、「設立年月日_会社名_定款」のように名前を決めて管理してください。電子署名の検証に必要な情報も一緒に保存します。
設立後に定款を変える場合
株式会社の定款変更には株主総会の特別決議が必要です(会社法第466条、第309条第2項第11号)。公証人の認証は要りません。認証済みの電子定款を書き換えるのではなく、変更後の内容で定款を作り直して備え置きます。商号・目的・本店所在地など登記事項が変わる場合は、変更登記も申請します。
11. よくある質問
電子定款にすると何が安くなりますか?
紙の定款に貼る収入印紙4万円が不要になります。定款認証手数料と登録免許税は紙と同じです。4万円の節約があるのは株式会社と持分会社(合同会社・合資会社・合名会社)で、一般社団法人・一般財団法人の定款はもともと印紙税の課税対象外です。
合同会社は定款認証が不要ですが、電子定款にする意味はありますか?
あります。合同会社は認証こそ不要ですが、紙で定款を作ると印紙税4万円がかかります。電子定款にすればこの4万円が不要になり、節約額は株式会社と同じです。
電子定款でも公証人の認証は必要ですか?
株式会社・一般社団法人・一般財団法人は、電子定款でも公証人の認証が必要です。合同会社・合資会社・合名会社は認証が要りません。認証が必要なのは設立時の原始定款だけで、設立後の定款変更には要りません。
紙の定款をPDFにするだけで電子定款になりますか?
なりません。紙に署名押印した定款をスキャンしたPDFは写しで、紙の原本に印紙4万円が必要です。電子定款は、最初から電子ファイルで作成し、マイナンバーカードなどによる所定の電子署名を付けたものです。
定款認証のために公証役場へ行く必要はありますか?
原則として不要です。2024年3月1日から、全国の公証役場で電子定款の認証の面前審査はウェブ会議が原則になりました。認証済みの定款データは、登記・供託オンライン申請システムなどからのダウンロードか、メールで受け取れます。
どのくらいの日数で会社を設立できますか?
日本公証人連合会の定款作成支援ツールを使うと、定款認証は原則48時間です(2025年3月3日から全国)。48時間は資料がすべてメールで公証役場に届いた時点から数え、土日祝日を除きます。認証後1週間以内に完全オンラインで登記を申請し、登録免許税を電子納付し、補正がなければ、認証と登記を合わせて原則72時間で終わります。認証から登記申請までの時間は含みません。
電子定款の認証手数料はいくらですか?
株式会社は資本金の額等が100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、300万円以上で5万円です。2024年12月1日から、100万円未満の株式会社で、発起人が全員自然人で3人以下、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の定款記載がある、取締役会を置く旨の定款記載がない、の3要件をすべて満たす場合は1万5,000円です。一般社団法人・一般財団法人は5万円です。
自分で電子定款を作るのと、専門家に頼むのはどちらが得ですか?
1回だけの設立なら、専門家に頼むほうが負担は小さいことが多いです。自分で作る場合はマイナンバーカード、ICカードリーダライタ、署名ソフト、申請用総合ソフトの準備が要ります。目的欄の書き方を誤ると、後の変更登記で登録免許税3万円がかかります。
電子定款での設立をご相談ください
当事務所は電子定款に対応しています。機器を用意していただく必要はなく、印紙代4万円は不要です。目的欄は設立後に取る許認可を確認したうえで設計します。LINE・電話・オンライン(Zoom)で全国から相談でき、初回40分は無料です。
主な出典(最終確認 2026年10月9日):会社法・会社法施行規則・商業登記規則・公証人法施行規則・公証人手数料令・印紙税法・登録免許税法/法務省「スタートアップ支援のための定款認証に関する新たな取組について」(令和7年3月3日更新)/法務省「登記・供託オンライン申請システム」お知らせ(2026年1月)/令和8年1月21日付け法務省民商第9号通達/日本公証人連合会「定款認証」関連ページ。手数料や運用は改正されることがあるため、手続きの前に公証役場・法務局の最新情報をご確認ください。
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