地域観光資源のコンテンツ化促進事業
令和7年度補正予算の観光庁事業。一次・二次とも公募は終了しました。
3類型の補助額と、採択566件の実データ(京都府・近畿の全採択事業)を解説します。
3類型
新創出/品質向上/分野特化
2,500万円
実質の補助上限(品質向上型)
566件
一次+二次の採択件数
15件
うち京都府の採択
30秒でわかる:観光需要分散コンテンツ化促進事業
・目的はインバウンド需要の地方分散とオーバーツーリズム解消。「造成→情報発信→販路開拓」を一体で支援。
・令和7年度補正予算による事業で、実施は令和8年度。事務局は株式会社JTB(霞が関事業部)で、執行団体を通じた間接補助です。
・3類型=新創出型(新たに造成)/品質向上型(既存を高単価化)/分野特化型(ガストロノミー)。
・補助構造は「一定額まで定額+超過分1/2」。新創出型 実質上限1,250万円(最低事業費600万円)、品質向上型2,500万円(同1,200万円)、分野特化型1,450万円(同600万円)。
・「定額=決まった額しか出ない」ではなく「定額枠の範囲は事業費に対して実質全額」の意味。
・一次公募(2/27〜4/2)は申請853件・採択373件=採択率約43.7%。二次公募(5/29〜6/18)は新創出型のみの募集で、申請525件・採択193件=採択率約36.8%。
・令和8年8月10日に二次公募の採択結果が公表され、事業サイトの公募期間表示も「公募は終了しました」となっています。三次公募は公表されていません。
・採択566件のうち近畿は72件(約12.7%)、京都府は15件。京都府の15件のうち京都市内は5件で、残り10件は京丹後・和束・南山城村・綾部・八幡・笠置・宇治・向日という府内の周辺地域です。
・採択された事業者は、交付決定前の発注・契約・支出が補助対象外になる点に注意が必要です。
・次回に向けたカギは「作る」だけでなく「誰に・いくらで・どこで売るか」の販売設計まで描けているかです。
📢 公募状況(2026年8月18日時点)
・一次公募:令和8年2月27日13:00〜4月2日12:00で受付終了。採択結果は令和8年5月28日に公表(申請853件・採択373件)。
・二次公募(新創出型のみ):令和8年5月29日13:00〜6月18日12:00で受付終了。採択結果は令和8年8月10日に公表(申請525件・採択193件)。
・現在、新規申請の受付はありません。事業サイトの公募期間欄も「公募は終了しました」と表示されています。三次公募の実施は公表されていません。
・採択事業一覧(新創出型 一次・二次、分野特化型、品質向上型)は観光庁および事業サイトでPDF公開されています。
・事務局:株式会社JTB 霞が関事業部(特設サイト juyobunsan.go.jp/TEL 03-6630-7372)。
本記事は、観光庁の公募情報ページ(一次公募採択結果/二次公募開始/二次公募採択結果)および採択事業一覧PDF、事業特設サイト(事務局:株式会社JTB)の公開情報に基づいて作成しています。京都府・近畿の集計は、観光庁公表の採択事業一覧(新創出型 一次・二次、分野特化型、品質向上型)を当事務所が府県別に集計したものです。今後、後継事業や追加公募が実施される可能性があるため、最新情報は観光庁および事業サイトでご確認ください。
目次
観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業とは(観光庁・令和7年度補正)
「観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業」は、令和7年度補正予算で措置され、令和8年度に実施されている観光庁の補助事業です。急増するインバウンド需要の地域偏在やオーバーツーリズムの問題を解決し、観光消費を全国に拡大することを目的としています。
訪日外国人旅行者は現在、都市部など特定地域に集中しがちで、一部地域では観光客過多(オーバーツーリズム)が顕在化しています。また、訪日客の消費動向を見ると、諸外国での滞在時と比べて日本では娯楽サービスへの支出額が低い傾向にあり、魅力的な観光コンテンツの提供が十分でない課題も指摘されています。
こうした背景から、本事業では観光による経済効果を日本各地に波及させるとともに、地方への持続的な誘客によってオーバーツーリズム解消につなげることを狙いとしています。具体的には、地方公共団体やDMO、民間事業者等が地域の多様な資源を活用して魅力ある観光コンテンツを創出・提供し、インバウンド観光客の需要を都市部から地方へ分散させる取組を支援します。
さらに高付加価値な観光体験(高単価コンテンツ)や、地域産業への波及効果が期待できるガストロノミー(食の体験)分野のコンテンツにも重点支援を行い、観光コンテンツの供給拡大と質向上を図ります。同時に、観光の付加価値を高めるために観光ガイド人材の質的向上(スキル研修や評価制度の整備等)も必要とされており、本事業ではコンテンツ造成とあわせてガイドの質向上策も推進されます。
※予算年度の表記について:観光庁の公募情報では本事業は「【令和7年度補正】」として案内されています。実施年度が令和8年度であるため「令和8年度事業」と紹介されることもありますが、根拠となる予算は令和7年度補正予算です。次年度以降の同種事業を探す際は、この違いを踏まえて検索してください。

1. この事業の狙い
訪日外国人旅行者の訪問先が一部地域に偏ることで起きる混雑や地域負担を和らげ、観光の経済効果を全国に広げるために、「需要分散に役立つ観光コンテンツの供給」を増やすことが狙いです。
本事業は、単に体験を作ることだけを支援対象にするのではなく、情報発信や販売先の開拓まで含めて支援対象としている点が重要です。需要分散の必要性に加えて、継続販売につながる「ネット上での効果的な情報発信」を促す方向性が示されています。
2. どんな取組が対象か(3類型)
本事業の取組は大きく3類型で整理されています。類型ごとに「何をしたい事業者に向くか」が明確に分かれています。
| 類型 | ねらい(要旨) | 向いているケース(判断の目安) | 募集された公募回 |
|---|---|---|---|
| 新創出型 | 地域資源を使って、新たに本格的な観光コンテンツを造成し、情報発信・販売先開拓まで一体で進める | これから新商品を作り、販売導線(売り先・売り方)も同時に作りたい | 一次・二次 |
| 品質向上型 | 既存コンテンツを、より高単価で売れる水準まで改善・高度化する | すでに体験はあるが、価格、満足度、運営品質を上げたい(高付加価値化したい) | 一次のみ |
| 分野特化型(ガストロノミー) | 地域の食資源を軸に、地域の事業者連携も含めて質の高い食文化体験を造成し、販路を作る | 食を主役にした体験で、地域産業への波及も狙いながら、販売まで作りたい | 一次のみ |
類型選択は、申請書の骨格(目的、内容、体制、費用、販路)を決める最初の分岐です。自社の計画が「新規造成」なのか「既存改善」なのか「食を軸に地域連携まで設計する」のかを、先に確定させるのが安全です。
※公募回による募集類型の違い:二次公募で募集されたのは新創出型のみで、分野特化型・品質向上型は一次公募のみの募集でした。予算の消化状況によって募集類型が絞られるため、次年度以降の同種事業でも「後半の公募回では類型が限定される」可能性を織り込んで、早い公募回で勝負するのが合理的です。
3. 補助額・補助率
本事業の補助は、「一定額までは定額(その範囲は実質全額)」「それを超える部分は2分の1」という構造です。ここは誤解が起きやすいので、制度の読み方として先に押さえる必要があります。
| 類型 | 仕組み(事業費に対して) | 最低事業費 | 実質の補助上限(計算結果) |
|---|---|---|---|
| 新創出型 | 400万円まで定額、超える部分は事業費2,100万円まで2分の1 | 600万円 | 1,250万円 |
| 分野特化型(ガストロノミー) | 400万円まで定額、超える部分は事業費2,500万円まで2分の1 | 600万円 | 1,450万円 |
| 品質向上型 | 800万円まで定額、超える部分は事業費4,200万円まで2分の1 | 1,200万円 | 2,500万円 |
つまずきやすい点は、「定額=決まった額しか出ない」という誤解です。この制度での定額は、「定額枠の範囲は、事業費に対して定額(上限まで実質全額)」という意味合いになります。
計算例(新創出型)
| 事業費 | 定額部分 | 1/2部分 | 補助額の目安 |
|---|---|---|---|
| 600万円(最低事業費) | 400万円 | (600−400)÷2=100万円 | 500万円 |
| 1,200万円 | 400万円 | (1,200−400)÷2=400万円 | 800万円 |
| 2,100万円(上限) | 400万円 | (2,100−400)÷2=850万円 | 1,250万円 |
事業費が2,100万円を超えても、超過分は補助対象になりません。逆に言えば、事業費2,100万円までは「使うほど補助額が増える」設計のため、計画段階で事業費のレンジをどこに置くかが補助額を決めます。最終的な補助対象経費の確定や条件の適用は、公募要領・手引き・交付手続で確定します。
4. 誰が申請できたか(対象者)
観光庁の公募情報および事業サイトでは、補助対象として地方公共団体、観光地域づくり法人(DMO)、民間事業者等が示されています。本事業は、観光庁が選定した執行団体(事務局:株式会社JTB 霞が関事業部)を通じて、コンテンツ造成を行う事業者(間接補助事業者)を支援する仕組みです。
対象者の幅が広く、民間の単独事業者でも申請できる点が特徴です。実際の採択事業一覧を見ると、市町村・観光協会・DMOと並んで、鉄道会社、電力会社、地方テレビ局、酒蔵、合同会社や中小の株式会社まで幅広く採択されています。一方で、審査では地域の関係者を巻き込めているか(地域への波及)が問われる構造のため、「単独で完結する体験」よりも「地域の事業者と組んだ体験」のほうが設計上は有利になりやすい制度です。
5. 一次・二次公募の採択結果と採択率
観光庁は、一次公募の採択結果を令和8年5月28日に、二次公募の採択結果を令和8年8月10日に公表しました。数字を並べると、公募回による難易度の差がはっきり出ています。
| 公募回 | 募集類型 | 受付期間 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一次公募 | 新創出型・品質向上型・分野特化型 | 令和8年2月27日13:00〜4月2日12:00 | 853件 | 373件 | 約43.7% |
| 二次公募 | 新創出型のみ | 令和8年5月29日13:00〜6月18日12:00 | 525件 | 193件 | 約36.8% |
| 合計 | — | — | 1,378件 | 566件 | 約41.1% |
読み取れるのは次の2点です。
第一に、二次公募のほうが採択率が約7ポイント低いという点です。二次公募は募集が新創出型のみに絞られた一方で申請は525件集まっており、残予算の中で選抜が行われたことがうかがえます。同種の事業に取り組む場合、「一次公募で出す」ことが確率上は有利という判断材料になります。
第二に、不採択が半数以上(一次で約56%、二次で約63%)という点です。申請すれば通る制度ではなく、計画の完成度が結果を分けています。次年度以降に挑戦する場合は、公募開始を待ってから企画を考えるのではなく、地域資源の棚卸しと販売設計を先に済ませておく必要があります。
なお、一次公募の内訳は新創出型309件・品質向上型49件・分野特化型15件で、新創出型が採択全体の8割超を占めます。二次公募は新創出型のみの193件です。
6. 対象経費
本事業の支援対象として示されているのは、観光コンテンツの造成、効果的な情報発信、販路開拓などに要する経費です。つまり「作る」だけではなく「売る」まで含めて支援の射程に入っています。
対象・対象外の細目(設備の扱い、外注の範囲、広告の扱い、旅費の扱い、消費税の扱い等)は、公募要領・経費の手引きで確定します。本事業の公募要領・交付規程・申請様式は事業サイトで公開されているため、経費区分の確認はそちらが一次情報になります。
申請者として「経費の切り方」を具体的にイメージするための参考モデルとして、類似の観光庁補助金(地域観光魅力向上事業)では、対象経費を「造成」「設備・備品」「販売基盤整備・広報」に分け、企画開発、専門家の意見聴取、ガイド育成、写真・動画・ホームページ制作、販路拡大のための取組などの例が示されています。
本事業でも同じ分類になると断言はできません。ただし、申請書作成の実務としては、「造成」「情報発信」「販路開拓」を一本の流れとして設計し、それぞれに必要な経費を紐づけて説明する構成が、制度目的に整合しやすい設計になります。
7. 京都府・近畿の採択事業(全72件の実データ)
観光庁が公表した採択事業一覧(新創出型 一次・二次、品質向上型、分野特化型)から、近畿2府4県の採択事業を当事務所で集計しました。全国566件のうち近畿は72件(約12.7%)です。
近畿の府県別 採択件数
| 府県 | 一次公募 | 二次公募 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 京都府 | 7件 | 8件 | 15件 |
| 大阪府 | 8件 | 5件 | 13件 |
| 滋賀県 | 9件 | 3件 | 12件 |
| 兵庫県 | 6件 | 6件 | 12件 |
| 奈良県 | 9件 | 1件 | 10件 |
| 和歌山県 | 6件 | 4件 | 10件 |
| 近畿 計 | 45件 | 27件 | 72件 |
| 全国 計 | 373件 | 193件 | 566件 |
※一次公募の件数は新創出型・品質向上型・分野特化型の合計。近畿の内訳は、品質向上型が滋賀1件・京都2件、分野特化型が兵庫1件・奈良1件で、残りは新創出型です。
近畿の比率は一次で約12.1%(45/373)、二次で約14.0%(27/193)。奈良県は一次で9件が採択された一方、二次公募での採択は1件と大きく落ち込んでおり、逆に兵庫県・京都府は二次公募でむしろ件数を伸ばしています。同じ地域でも公募回によって結果は動くため、「一度落ちたから地域的に不利」と判断するのは早計です。
京都府の採択事業 全15件
京都府の採択15件は次のとおりです。事業名は一覧の表記を要約しています。
| 公募回・類型 | 市町村 | 実施主体 | 事業の内容 |
|---|---|---|---|
| 一次・新創出型 | 京都市 | ジオ・マーク株式会社 | 2025年に国宝指定された「山科疏水」を核に、漫画とデジタルスタンプラリーを掛け合わせた通年型の多言語周遊ラリー |
| 一次・新創出型 | 京丹後市 | 株式会社エーゲル | 国定公園の山頂にある蒸留所の世界一受賞クラフトジンを核に、薬草・里山の産物・ジビエを学ぶスタディツアー |
| 一次・新創出型 | 京丹後市 | 株式会社森を織る | 丹後半島の絹織物文化(風土・技術・祈り)を活用した海外団体向け高付加価値ツアーのコンテンツ制作 |
| 一次・新創出型 | 京丹後市 | 日本航空株式会社 | 但馬空港を活用し、城崎と京丹後を結ぶ分散滞在型のヒストリカルガストロノミー |
| 一次・新創出型 | 八幡市 | 一般財団法人石清水なつかしい未来創造事業団 | 国宝石清水八幡宮を核に、伝統芸能・祭礼体験、エジソン関連史跡、松花堂弁当づくり、三川合流の自然体験を組み合わせた高付加価値観光 |
| 一次・品質向上型 | 京都市 | 株式会社curioswitch | 近衞家次期当主の案内で陽明文庫等の非公開文化資源を紐解く超富裕層向け「当事者体験」。宇多野と祇園を連携した誘客分散 |
| 一次・品質向上型 | 笠置町 | 関西電力株式会社 | 既存のeバイクツアーに夜間景観形成(ライトアップ)と笠置寺での日本文化体験を加えた滞在型の「光の笠置山巡礼ツアー」 |
| 二次・新創出型 | 綾部市 | 綾部市 | 全国茶品評会1位の綾部茶と、おくどさんで炊くコシヒカリのおにぎり。里山のテロワールを味わう没入型ガストロノミー |
| 二次・新創出型 | 宇治市 | 株式会社JR西日本コミュニケーションズ | 京都市内から宇治・萬福寺へ富裕層を誘導。国宝空間での特別拝観、普茶料理、煎茶継承者の実演を繋ぐ「禅と煎茶」ツアー |
| 二次・新創出型 | 京都市 | 叡山電鉄株式会社 | 叡電沿線の寺社・庭園・駅舎を「洛北の静寂」「庭屋一如」で結び、早朝・非混雑時間帯を活用した文化体験 |
| 二次・新創出型 | 京都市 | 株式会社増田德兵衞商店 | 京都最古級の酒蔵を核に、地元農家・飲食店が連携した酒蔵見学→農業体験→ペアリングの酒・農・食一体型体験 |
| 二次・新創出型 | 京都市 | 醍醐寺・早朝プレミアム禅ヨガ実行委員会 | 歴史的社寺と庭園文化にデジタル演出を融合した早朝ウェルネス体験(禅ヨガ) |
| 二次・新創出型 | 南山城村 | 合同会社FARM to SMILE | 京都府唯一の村で、宇治茶の茶畑見学・製茶体験・古民家宿泊を組み合わせた滞在型ツアー |
| 二次・新創出型 | 向日市 | 公益社団法人京都府観光連盟 | 「京都式軟化栽培法」の筍と竹林景観を支える職人の技術・食・工芸を巡る「竹の里・乙訓」のストーリー型ツアー |
| 二次・新創出型 | 和束町 | 株式会社THE WELL | 宇治茶の45%を生産する和束町で、茶畑仕事から摘み・蒸し・揉み・乾燥・石臼挽きまでを手がける「茶農家になる2日」 |
※採択事業一覧の市町村欄では京丹後市が「丹後市」と表記されています。本表では実際の自治体名で記載しました。
京都府の採択から読み取れる3点
① 京都市内は15件中5件。残り10件は府内の周辺地域です。京丹後市3件のほか、綾部市・宇治市・南山城村・向日市・和束町・八幡市・笠置町が各1件。「需要分散」という事業目的がそのまま採択結果に表れており、京都市中心部での企画は不利になりやすいと読むのが自然です。京都市内の5件を見ても、山科疏水・叡電沿線の洛北・伏見の酒蔵・醍醐寺・陽明文庫と、いずれも清水寺や嵐山といった混雑エリアを外した場所が舞台になっています。
② 最大のクラスターは「茶」です。綾部茶、宇治・萬福寺の煎茶、南山城村の宇治茶、和束町の宇治茶と、15件中4件が茶を主題にしています。京都府にとって茶は、産地・製法・喫茶文化・寺院という4層の物語を1本のツアーに束ねられる資源で、この事業の求める「地域資源×高付加価値×販路」の型に乗せやすいことが分かります。
③ 実施主体の規模はバラバラです。関西電力・JR西日本コミュニケーションズ・日本航空・叡山電鉄といった大企業と並んで、合同会社FARM to SMILE、株式会社THE WELL、株式会社エーゲル、株式会社森を織るのような小規模事業者、さらに綾部市(自治体)、京都府観光連盟、実行委員会形式まで採択されています。企業規模は採否を決めていません。決めているのは、地域資源の固有性と販売設計の具体性です。
近畿の他府県で目立つテーマ
京都府以外の近畿でも、この事業に乗せやすいテーマの傾向が読み取れます。
- 滋賀県(12件):琵琶湖のサイクリング、比良山系のガストロノミー、信楽の里山滞在、甲賀忍者、長浜の茶事・能楽、彦根、東近江(2027年のワールドマスターズゲームズ・デスティネーションキャンペーンを契機とするもの)
- 大阪府(13件):堺商人・堺打刃物、泉州のタオル工場と温浴文化、岸和田城、泉南の漁師体験、和泉葛城山、河内長野の禅、水無瀬神宮の雅文化。大阪市内は2件のみで、大半が泉州・南河内・岬町など周辺部です
- 兵庫県(12件):淡路島の農と発酵、姫路城の武士道サイクリング、豊岡の書と杞柳細工、たつの・上郡・多可といった播磨内陸部、赤穂の塩とミネラル(分野特化型)
- 奈良県(10件):吉野の修験道・農・酒蔵が計4件と集中。ほかに今井町と吉野を結ぶものづくり、山の辺の道、興福寺十二神将、橿原の発酵(分野特化型)
- 和歌山県(10件):熊野(新宮・那智勝浦・熊野古道)が中心で、串本のロケット観光、南紀白浜のEVモビリティ、みなべの世界農業遺産「梅システム」など
共通するのは、「その地域でしか成立しない資源」+「誰に売るかの明示」+「地域の担い手との連携」という3点セットです。逆に、どこでもできる体験や、作って終わりの計画は見当たりません。

※イメージ画像です。
8. 審査で見られやすいポイント
審査は外部有識者を含む選定委員会で行われます。ここでは「確定して言えること」と「参考モデル(類似事業)」を分けて整理します。
1. 確定して言えること(公開資料の範囲)
本事業は「造成して終わり」ではなく「需要分散に資する観光コンテンツの供給を増やし、情報発信と販路開拓まで含めて支援する」設計である、という事業趣旨が示されています。したがって、申請書でも「販売までの道筋」を計画として持っているかが論点になりやすい構造です。前章で見たとおり、採択事業の事業概要は例外なく「誰に(欧米豪FIT/台湾リピーター/富裕層など)」「何を」「どう売るか」まで一文で言い切れる形になっています。
また、申請にあたってプレゼン動画の提出が求められた運用でした(一次公募では動画提出システムの不具合が事務局から告知されています)。書面だけでなく、映像で企画と提供者の熱量を伝える設計が求められた点は、次回に向けても押さえておく価値があります。
2. 参考モデル(類似の観光庁事業の公募要領等に見られる評価観点)
類似事業では、地域全体への効果(地域の関係者を巻き込めているか、地域への経済波及が厚いか)、地域ならではの独自性、計画の具体性(目標・方法・費用内訳・販売設計が具体的か)、実施体制と継続性(事業が終わっても回るか、販売する事業者が明確か)、収益性(価格・コスト・販路が現実的で自走できるか)といった観点で評価する形が示されています。
採択率が4割前後という結果を踏まえると、これらの観点のいずれかが空欄に近い計画は通りにくいと考えるのが現実的です。
9. 採択後の実務(交付決定・実績報告)
一次・二次を合わせて566件が採択され、多くの事業者が現在、事業実施のフェーズにあります。ここで失点しやすい論点を整理します。
1. 交付決定前の発注・契約・支出は補助対象外
類似事業では「交付決定前の発注・契約・支出は補助対象外」と明記されており、これは補助金制度に共通するルールです。採択通知は交付決定ではありません。採択されてから交付決定までの間に、制作会社やガイド事業者と契約を交わしてしまうと、その経費は全額自己負担になります。企画・見積・仕様固めは進めつつ、契約・発注・支払いのタイミングは交付決定後にずらせる体制にしておくことが不可欠です。
2. 全体の流れ
類似事業では、応募→(有識者を含む)委員会で審査→採択通知→交付申請→交付決定後に事業開始→進捗報告→完了実績報告と精算書類→審査後に補助金支払い、という流れが示されています。補助金は原則として精算払いのため、事業期間中の資金は自社で立て替える必要があります。事業費2,100万円規模の計画であれば、その分の資金繰りを先に組んでおく必要があります。
3. 伴走支援・海外発信の活用
観光庁資料では、採択された事業者に対して専門家派遣などの伴走支援、海外イベント出展などの海外向け情報発信が行われる予定であることが示されています。採択後に受け身でいると使い損ねる支援なので、事務局からの案内は確認しておくべきです。
4. 経費の使い方への注意
事業サイトには「補助金の適切な使用について」という注意喚起ページが設けられています。補助金は精算時の証憑で実態を確認されるため、外注先との契約書・見積・請求・支払の記録を、事業開始時点から揃えて残す運用にしてください。
10. 次の公募に備えて、いま準備できること
本事業は令和7年度補正予算による事業で、現時点で三次公募は公表されていません。ただし観光庁は、名称や枠組みを変えながら、地域資源を活用した観光コンテンツ造成と販路開拓を支援する事業を継続的に実施してきています(例:地域観光魅力向上事業)。次年度以降に同種の事業が実施される可能性を前提に、公募開始前にできる準備を挙げます。
| いま進めること | 理由 |
|---|---|
| 地域資源の棚卸しと、コンテンツ案の絞り込み | 受付期間は1か月程度しかなく、公募開始後に企画から始めると間に合わない |
| 販売設計(誰に・いくらで・どこで売るか)の確定 | 制度の狙いが「販路開拓まで」にあり、審査の中心になる |
| 地域の連携先(生産者・宿・交通・ガイド)との合意 | 地域への波及効果が評価観点になるため、単独計画は不利になりやすい |
| 採択事業一覧で、自社の企画と近いテーマを確認 | 同一テーマが既に採択されている場合、差別化の切り口を先に決められる |
| 外注先候補からの概算見積の取得 | 経費内訳の具体性が計画の説得力を左右する。契約は交付決定後で問題ない |
| ガイド・提供体制の品質設計(研修・運用ルール・報酬) | ガイド人材の質的向上が事業の方向性に含まれており、価格の根拠にもなる |
| プレゼン動画の素材(現地映像・体験風景)の確保 | 動画提出が求められる運用の場合、撮影から始めると時間が足りない |
特に、販売設計と連携先の合意は、公募が始まってから短期間で作れるものではありません。ここを先に固めておけるかどうかが、次回の採否を分けます。
11. 公式情報(確認先・問い合わせ)
一次情報は次の2つです。
- 観光庁 公募情報ページ(一次公募・二次公募の開始および採択結果の公表、採択事業一覧PDF)
- 事業特設サイト juyobunsan.go.jp(公募要領・交付規程・申請様式、Q&A集、説明会アーカイブ動画、採択事業一覧)
事務局は株式会社JTB 霞が関事業部(TEL 03-6630-7372/受付10:00〜17:00、土日祝を除く)です。採択結果に関する個別の審査内容についての問い合わせには応じられない旨が観光庁から案内されています。
事業サイトでは、事業計画づくりに役立つセミナー動画(自走・持続可能なコンテンツ造成・販売のポイント、個人旅行客にどう伝えどう売るか)や参考事例紹介も公開されています。公募が終了した現在も視聴でき、次回に向けた準備資料として有用です。
12. 申請代行・当事務所のサポート
行政書士潮海事務所(京都市中京区)は、補助金サポート実績105社超・採択率73%。観光系補助金の申請支援を行っており、この事業のように「造成→情報発信→販路開拓」を一本のストーリーで設計する必要がある補助金で力を発揮します。初回相談は40分無料です。
次の公募に向けて企画を固めたい
地域資源を活かしたコンテンツ企画・販売設計・連携体制・経費組み立てまで、公募開始前から準備を伴走します。京都府内の採択傾向も踏まえてご提案します。
いま使える他の補助金を探したい
本事業の公募は終了しています。国・京都府・京都市の制度を組み合わせ、御社の取組に今から使える補助金の選定からご提案します。
よくある質問
Q. いま申請できますか?
できません。一次公募(令和8年2月27日〜4月2日)、二次公募(令和8年5月29日〜6月18日)とも受付を終了しており、事業サイトの公募期間欄も「公募は終了しました」と表示されています。二次公募の採択結果は令和8年8月10日に公表されました。三次公募の実施は公表されていません。
Q. 一次公募と二次公募の採択率はどのくらいでしたか?
一次公募は申請853件・採択373件で約43.7%、二次公募は申請525件・採択193件で約36.8%でした。合計では申請1,378件・採択566件で約41.1%です。二次公募のほうが採択率は低くなっています。採択事業一覧は観光庁および事業サイトでPDF公開されています。
Q. 京都府では何件が採択されましたか?
京都府の採択は15件(一次7件・二次8件)です。内訳は京都市5件、京丹後市3件、綾部市・宇治市・南山城村・向日市・和束町・八幡市・笠置町が各1件。近畿全体では72件(大阪府13件、滋賀県12件、兵庫県12件、奈良県10件、和歌山県10件)で、全国566件の約12.7%を占めます。
Q. どんな企画が採択されていますか?
京都府では茶を主題にした企画が15件中4件(綾部茶、萬福寺の煎茶、南山城村と和束町の宇治茶)と最大のクラスターです。ほかに酒蔵、竹の里・乙訓、丹後の絹織物、石清水八幡宮、叡電沿線の洛北など。京都市内の企画も、清水寺や嵐山といった混雑エリアではなく、山科疏水・洛北・伏見・醍醐といった場所が舞台になっています。「需要分散」という事業目的が採択結果にそのまま表れています。
Q. 補助額・補助率はどのくらいですか?
類型で異なります。いずれも「一定額まで定額+超過分は1/2」という構造で、新創出型は400万円まで定額+事業費2,100万円まで1/2(実質上限1,250万円・最低事業費600万円)、品質向上型は800万円まで定額+4,200万円まで1/2(実質上限2,500万円・最低事業費1,200万円)、分野特化型(ガストロノミー)は400万円まで定額+2,500万円まで1/2(実質上限1,450万円・最低事業費600万円)です。
Q. 誰が申請できましたか?
地方公共団体、観光地域づくり法人(DMO)、民間事業者等が対象です。観光庁が選定した執行団体(事務局:株式会社JTB 霞が関事業部)を通じた間接補助の仕組みで、コンテンツ造成を行う事業者が支援を受けます。実際の採択事業を見ると、鉄道・電力・航空といった大企業から、合同会社や小規模な株式会社、自治体、実行委員会まで幅広く採択されています。
Q. 令和8年度の事業ですか、令和7年度の事業ですか?
観光庁の公募情報では「【令和7年度補正】」として案内されており、根拠となる予算は令和7年度補正予算です。実施年度が令和8年度であるため「令和8年度事業」と紹介されることもあります。次年度以降の同種事業を探す際は、この違いを踏まえて検索してください。
Q. 採択された後、すぐに制作会社と契約してよいですか?
採択通知は交付決定ではありません。類似事業では交付決定前の発注・契約・支出は補助対象外と明記されており、補助金制度に共通するルールです。企画・見積・仕様固めは進めつつ、契約・発注・支払いは交付決定後に行ってください。また補助金は原則として精算払いのため、事業期間中の資金は自社で立て替える必要があります。
Q. 次の公募に向けて、いま何を準備すればよいですか?
販売設計(誰に・いくらで・どこで売るか)と、地域の連携先(生産者・宿・交通・ガイド)との合意です。この2つは公募開始後の1か月で作れるものではありません。あわせて、コンテンツ案の絞り込み、採択事業一覧での類似テーマの確認、外注先からの概算見積、提供体制の品質設計、プレゼン動画用の現地素材の確保を進めておくと、公募開始後の作業が申請書への落とし込みだけで済みます。
弊所では、観光系補助金・省力化補助金・ものづくり補助金などの申請を専門的にサポートしています。初回相談は40分無料です。
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